13話 ページ14
家の前まで送ってもらい、少し寂しくなる。
明日もまた会えるというのに。
現在、向かい合ったまま「じゃあね」を言おうと思っている状態。
でもなんだか別れ難くて、飛雄くんの右手を持ち上げて胸の前でぎゅっとする。
好きなようにさせてくれている飛雄くんの優しさに胸が温かくなって、幸せでいっぱいになる。
「会いたくなったら言ってくれ。
時間作るの難しいかもしれないけど、部活終わりでも会いに来る。」
「ありがとう。」
思わず頬がゆるゆるになる。
あー…好きだなーってキュンとしていると、左側から「げっ!」という聞き慣れた声が聞こえた。
まさかと思って顔を向けると、兄と一さんが二人揃ってこっちを見ていた。
「人ん家の前で、人の妹に手出すとか何?
言っとくけど俺は交際に賛成してるわけじゃな…」
ドスッ!
「いったぁぁあああ!なに!?岩ちゃん!!」
「妹と後輩の交際にいちいち口挟むな。
めんどくせぇぞ、ク……及川。」
兄の小言が続くと思っていたけど、さすが一さんというか何というか。兄の扱いに慣れている。
この人が兄の隣にいるだけで安心感があるのは何でだろうか。何も不安がない。
「なにさー!ていうか今’’クソ及川’’とか使わなかったのってAが居たからでしょ?Aも及川だから気を遣った…」
ゲシッ!!
「うっせぇな!良いから早く試合のビデオ持ってこいよ!早く帰りたいんだよ、俺は!」
「分かったよ、もー。ちょっと待ってて!」
そう言いながら兄が家へと入っていく。
一さんは門柱に背中を預け、腕組みしながら目を閉じて待機してる。小さい時から、兄に小言を言われた時は助けてくれていた一さん。昔から変わらない優しさに懐かしくもあり、嬉しくもあった。
「ありがとうございます、一さん。」
「んぁ?感謝されるようなことはしてねぇよ。
それより、あいつが戻ってくる前に早く挨拶済ませろ。影山も、いちいち言われるのうぜぇだろ?俺はいないものと思え。」
「うぃっす。」
言い終わると再び目を閉じる一さん。
腕組みをしてたはずの手は、いつの間にか本人の両耳に被せられていた。
「じゃあ。また明日な。」
「うん、またね。」
頭にポンと手が乗せられてそのまま撫でられる。
飛雄くんの手は指が長いからなのか、撫でられるとヘッドマッサージされてるような癒し効果がある。
触れられたことにドキドキしつつ、一さんに頭を下げたあと帰路に着く飛雄くんに手を振った。
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作者名:灰次 | 作成日時:2019年6月28日 10時