遠回りな恋と温かな愛【影山飛雄】 (ページ11)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:1,366 hit

10話［影山side］ページ11

謝っただけでこのままAと離れれば、本当にもう二度と会うことはないんじゃないかと思った。
優しく笑うその顔は、別れを告げた直後のあの顔に似ていた。きっとどこかでまた無理をさせてる。
好意を伝えて気持ちが受け入れられなくても、最後にあの嬉しそうな笑顔が見たい。

「……謝りに来たわけじゃない。
もちろん謝罪の気持ちもあるのは確かだ。でも、本題はそうじゃない。俺は……Aに隣に居てもらいたい。俺の一番近くで笑ってほしい。どうしようもないほど好きだ。隣にいてくれないと困る。」

胸が痛くて熱くて。
それがいつしか目にも届いて、情けないけど泣いていた。’’好き’’が身体の中から溢れて止まらない。
Aを見つめると、Aも泣いていた。

「私……隣にいていいの？
振られてもずっと飛雄くんのことが好きで忘れられないような重い女だよ。今度は束縛だってしちゃうよ。そんなの……私は嫌だ！あなたの重荷にだけはなりたくない！！」

涙が止まらないのか、すでに真っ赤な目を擦っているAの手を掴まえて引っ張り、俺の胸の中に閉じ込めた。抵抗されるかと思ったけど、されなかった。

「束縛だってしていい。重荷にはならねぇし、逆にAが居てくれないともうバレーに集中できねぇ。俺の事まだ好きでいてくれてるなら……俺の彼女になってください。」

返事が怖くて、つい抱きしめる力が強くなる。
Aは泣きじゃくっているけれど、頭を俺の胸に押し当てて動かなかった。数分して落ち着いたのか、頭を俺から離した。それを見て俺も腕を緩めて、少しだけ二人の間に隙間を作った。

Aはスカートのポケットからティッシュを取り出して、一度だけズズーっと鼻をかんだ。
あれだけ泣けば仕方ない。むしろ申し訳ない。

「A？」

顔が見えないのが不安で、名前を呼んでみた。
Aは泣いてスッキリしたのか、晴れやかな表情で俺を見つめると、こう続けた。

「……私を彼女にしてください。」

嬉しくて、温かくて。
こんな幸せがあっていいのか、考えた。

「いいのか？……俺は多分もう、Aを離せない。一生俺の隣にいることになるんだぞ？」

「なんかプロポーズみたいだね。
私だってもう離れないし、重い束縛女になっちゃうから。後悔してもしらないよ？」

「Aが隣にいないと、嫌だ。」

束縛しちまうのは俺かもしれない。
嬉しそうに笑うその顔を見て、俺は赤い目元に口付けた。