5. ページ6
「平気、Aが庇ってくれたから」
彼等の態度を知ってか知らずか、千恵は微笑んだ。
「ふーん」
そう鼻を鳴らすのは2年、丸井ブン太。
敵意を含んだ目で、Aを睨む。
それに気づいている彼女だが、へらりと笑って見せた。
丸井は少し驚いた反応を見せるが、すぐに目をそらした。
「千恵、帰ろう」
千恵の方を向いたAは、急かすように彼女の腕を引いた。
よほどテニス部が嫌いなんだろう。
いや、虫けら程度にしか思っていないのかもしれない。
「うん」
不思議そうに頷く千恵。
「ちょっと待って」
歩きだそうとするAを呼び止める声がする。
その声の主が幸村だとわかった彼女は、ギリッと歯ぎしりをするが、すぐに笑みを貼り付けて振り返った。
Aは幸村のことが特に嫌いだった。
あの探るような目がどうにも嫌いなのだ。
「何？」
ソプラノ音を喉で響かせるA。
貼り付けた笑みでさえ、その場の者を魅了する。
R陣も内心、たじろいでいた。
「千恵は先に帰っておいて。
俺は彼女に話があるんだ」
千恵に優しく笑いかける幸村は、含みのある声で促した。
幸村達を信用している千恵は２つ返事で、すぐに去っていった。
＊
千恵の背中が見えなくなったあと、先ほどまで笑っていたのが嘘のように、幸村たちは冷たくAを見下ろした。
「俺達の言いたいこと、わかるよね？」
冷たい空気の中、切り出したのは幸村だった。
他の奴等は賛同するように、じっと彼女を見つめる。
「言いたいことって？」
(めんどくさい、早く消えろ)
そんな彼女の心の内の声など、届きはしない。
表面上、ただへらへらと笑っているのだから。
「どういうつもりで千恵に近づいてるんだい？」
はぐらかされるのがわかっていたのか、幸村はあくまで冷静に言葉を繋げた。
「言ってる意味がわからない」
彼等の言いたいことはわかっても、Aにとっては理解できないものだった。
どういうつもりもなにもない。
ただ、親友として隣にいるだけだ。
そう思って、Aは笑みを崩した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 448人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「テニスの王子様」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆき - 文才が天才的ですね♪ これからも楽しく読ませていただきます！(私は小6なので言葉おかしかったらすみません) (2017年5月8日 16時) (
レス) id: 1ca8e8f005 (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - 射命丸霊夢さん» ゆっきーの誕生日です。笑 いえ、こちらこそありがとうございます。 (2015年1月3日 7時) (レス) id: e7993006ee (このIDを非表示/違反報告)
射命丸霊夢 - ああ、なる…。ありがとうございいます。 (2015年1月3日 0時) (レス) id: 0d3418cc1f (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - 射命丸霊夢さん» 0305です！ (2015年1月2日 19時) (レス) id: e7993006ee (このIDを非表示/違反報告)
射命丸霊夢 - かまわないです。おねがいします。 (2015年1月2日 19時) (レス) id: 0d3418cc1f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：SHINO
| 作成日時：2014年2月22日 13時
