33 ページ36
▽
｢また来るからね！｣
｢すぐ退院するから｣
｢お大事に｣
早く治せよ、という神谷におーと返事して、2人に引きずられながら帰っていく成宮を見て苦笑しながら手を振った。
｢元気すぎだろ｣
病室に戻ると唯が起きててどこ行ってたの！？と詰め寄られたので、成宮達が来てたと言えば安堵したように良かったと呟いた。
.
最終の面会時間が近付いてきて帰る準備をしている唯を見つめていると、病室のドアが開く。
入ってきた人物に驚いて居ると、唯は俺を庇うように俺の前に立つ。
｢何の用ですか？｣
｢唯ちゃん、久しぶりね｣
綺麗になったわね、と人の良さそうな笑顔を唯に向ける母親に、唯はきつい視線を送る。
｢だから、なんの用ですか？｣
｢息子に会いに来るのに理由がいるかしら？｣
息子と二人で話したいから席を外してくれる？と言った母親に唯は嫌です、ときっぱり断った。
｢どうして？｣
｢どうしてって｣
一樹をこんな風にしたのは貴方でしょ？と言われた母親の顔色が変わる。
怒りにも似た表情で唯に詰め寄っていく。
振り上げられた手を見て目を閉じる唯の手を引いて、母親の手を掴めば、驚いたように俺の手を振り払おうとしたけど、男の力には勝てない様で抵抗するのを辞めた。
｢何よ｣
｢あんたが俺に対して振るう暴力は理解ができる｣
けど、唯は関係ないだろ、と母親を睨めば罰が悪そうな顔をして。
｢本当に早く死ねば良いのに｣
｢残念だったな｣
生きてて、と笑ってやればまた腕を振り上げて来て。
振り下ろされたそれを交わしてみれば心底悔しそうな顔をしてて、思わず笑ってしまう。
｢最悪｣
｢俺もあんたみたいな母親を持って最悪だよ｣
悔しそうな顔で俺を睨みつけてから母親は無言で病室を出ていった。
｢大丈夫か？｣
｢私は、平気｣
ごめんね、と申し訳なさそうな顔をする唯の頭を数回軽く叩くと、なんで今まで抵抗しなかったの？と聞かれる。
｢俺への怒りが兄貴の事なら仕方の無い事だから｣
けど、唯への暴力は違うだろ？と言えば唯は不満そうな顔をしてからばか、と呟いた。
痛い思いをするのは俺だけで良い、他の奴らにはそんな思いをさせたくない。
特にこいつには。
｢じゃあ、また明日｣
｢…｣
｢どうしたの？｣
さっきの事で母親が周辺を彷徨いてても可笑しくない。
今日は泊まってけ、と言えば少し悩んだ後、分かったと頷いた。
▽
カラオケ行きてぇ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 58人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おえかきちょう | 作成日時：2020年3月5日 3時
