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稲実との練習試合の日、ブルペンで沢村の肩慣らしに付き合っていれば、フェンスの向こう側で御崎と鳴が話しているのが見える。
嫌な予感がして近寄ってみれば、恐怖にも似た顔で震えている彼の姿が目に映る。
持っているジャグが彼の手から落ちそうになるのを支えてやると、泣きそうな顔で俺を見上げる御崎。
｢…御幸、俺｣
｢大丈夫だから｣
マネージャー呼んでた、と適当に嘘を吐いて彼をこの場から離れさせる。
鳴と二人きりになった俺は、少しきつい視線を鳴に送る。
｢一也さ、あいつの事知ってんの？｣
｢何の？｣
あいつの過去の事、そう鳴は意地の悪そうな顔で笑う。
知ってるよ、そう言えば鳴は驚いたように目を瞬いた。
｢何で人殺し何かを仲間に入れたの？｣
信じられない、そう呟いた鳴に腹が立った。
お前は、あの時その場に居たんだろ、その時の状況見てたんだろ、なのに何でそんな風にあいつを悪く言えるんだ。
｢お前は何を見てた？｣
｢は？｣
｢その場に居たお前はあいつの何を見てた｣
｢…それは｣
周りに便乗してあいつの事を人殺しと罵るなら俺はお前を許さない、そう言えば鳴はバツの悪そうな顔をして。
｢…でも、事実じゃん｣
｢何が？｣
｢実際、あいつの兄は脳死だよ｣
人殺しって言われてもしょうが無いよ、そう吐き捨てた鳴に無性に腹が立って。
気付いたら俺は鳴の胸ぐらを掴み上げていた。
｢良くも平気でそんな事言えるな｣
｢だって、事実じゃん！｣
｢お前は何を見てた｣
｢だから！｣
｢その場の状況を見て、本当にお前はあいつを人殺しなんて言うのか？｣
それは、と言葉に詰まる鳴を離せば、分かってるよと呟いた。
｢…けど、｣
｢お前のその言葉であいつがどれだけ傷付いたと思う｣
｢あいつを悪者だと思わないと！｣
そうでもしなきゃ俺はじゃあ、誰を恨めばいいんだよ、泣きそうな声で小さくなるの言葉に、彼の兄の顔がふと浮かぶ。
｢御崎、一真｣
｢俺の知ってる中で、最高の捕手だった｣
受けてもらいたくて、俺はあのシニアに入ったのにと言った鳴の大きい瞳が揺れる。
受けてもらえる前にエースナンバーもあいつに取られて、そんな時にあの事故が起きて、そんなのじゃあ、俺は何の為にあのシニアに入ったんだよ！そう叫ぶ鳴に、俺は何も言えなかった。
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仕事辛いな、暇だけど。
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作者名：おえかきちょう | 作成日時：2020年3月5日 3時
