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監督室の扉を数回ノックして入れ、と聞こえたのを合図に扉を開くと、椅子に座った監督がこちらを一瞥して何か用か？と言った。
｢ご相談が｣
｢何だ｣
｢今の立ち位置についてなんですけど｣
黙って聞いている監督に自分の気持ちを伝えると、監督は少し考えた素振りを見せて座れと命じた。
近くのソファに腰を下ろすと、目の前に監督が座る。
こうして相向かいで話す事なんて今までなくて少し緊張する。
｢俺としては、お前にはこのチームに貢献してもらいたいと思っていた。
お前の実力は買っているつもりだ。
だが、お前がそれが難しいと言うのであれば、無理強いはしない。｣
お前の意志を尊重してやりたい、そう言った監督は少し表情が柔らかくなっていて、ありがとうございますと頭を下げた。
｢野球から離れるには心残りがあり過ぎて、けど、続けるにはまだ気持ちが追いついてこなくて。
日々、甲子園、上へ上へと目指している仲間が居る中で俺の存在は中途半端でしかないです。
だったら、俺はそんな彼等のサポート役に回りたいと思います。｣
｢そうか｣
｢我儘は承知の上ですが、｣
気にするな、と監督は俺の頭に大きな手を乗せてポンポンと数回優しく叩いた。
それが何となく嬉しくて、俺は小さく笑った。
｢お前には、主に投手陣のサポートをマネージャー職と兼任して貰う｣
｢分かりました｣
｢大変になると思うが｣
頼んだぞ、と監督に言われてしまえば断るわけにもいかなくて、努力しますと言えば監督は小さく笑った。
｢失礼します｣
監督室を出ると一気に緊張が解けて1つため息をついた。
緊張した、と自分の胸に手を当てればまだ少し早い鼓動に苦笑した。
緊張しすぎだろ、俺。
監督はラスボスか何かか、なんて。
｢明日から頑張ろう｣
立ち位置は変わるけど、あの時みたいに野球が出来るようになるまで、それ迄は彼等のサポートを頑張ろう、そう心に誓った。
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あ、タバコ切れた
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作者名：おえかきちょう | 作成日時：2020年3月5日 3時
