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｢美味い｣
俺の料理を一口食べた彼は少し悔しそうに顔を歪めた。
｢何だよ｣
｢不味かったら盛大に笑ってやろうと思った｣
｢残念だったな、上手いだろ？｣
ニヤニヤしながら彼に言えば、彼はムカつくと言って料理を食べ始めた。
そう言えば、と言えば彼は何？と一瞬俺を見た。
｢お前料理すんの？｣
この部屋には家電や料理の器具はあっても、ほぼほぼ使った形跡がない。
こいつ、ちゃんと飯食ってんのか？と心配になる。
｢家では基本食べない｣
｢は？｣
｢昼は唯が弁当くれるから｣
それ以外は、と言えば食べたり食べなかったりと彼は目を逸らして言う。
｢息子の食生活が心配だよ、お母さんは｣
｢誰がお前の息子だよ｣
目が合って、2人で吹き出して笑う。
一頻り笑いあった後、彼は少し寂しそうな顔をして家には余り良い思い出ないからさ、と呟いた。
｢俺、あの日から、家族とも疎遠でさ、
高校行くのと同時に家を出た。
特待生だから、授業料とかは問題ないし、
バイトしてるから、基本自分の事は自分でやってる。｣
意外、と言えばうるせぇ、と軽く睨まれる。
｢あの日から、お前にも同じ事してやるって言われて、虐待的なのも始まった。
割とそれトラウマでさ、家具とかあると思い出すから余り置いてない。
ゲーム機とか漫画とか、兄貴が居た頃はめっちゃ大好きで2人でよくやってた。
けど、兄貴はもうそれが出来ないからさ｣
俺には、兄貴が出来ないことをやる資格は無い、と彼は悲しそうな笑みを浮かべた。
さっき、お前だけのせいでは無いと言ったばっかなんだけどな、と思いながら、彼の話に耳を傾ける。
｢今は親とも縁を切ってる状態で、本当に1人だけどさ｣
後悔はしてないんだ、という彼の顔は凄くスッキリした顔だった。
▽
文字数制限なんて無ければ良いのに…
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作者名：おえかきちょう | 作成日時：2020年3月5日 3時
