全てを知るまで傍にいさせて ページ39
「え…スモーカーさん…なんでここに？」
「近くに居たんでな。俺たちが回されたんだ」
いつものように葉巻をふかしながら船から降りてくるスモーカーにAは勝手に気まずさを感じ視線を逸らした
本当は嬉しいはずなのにまた嫌なことを思い出す
「そうなんだ」
「お前じゃねェだろ、こりゃァ。誰がやったんだ？」
「…さぁ。騒ぎがあって来てみたらこの有様だったの。やった奴らは船を奪って逃げたんじゃない」
「…そうか」
スモーカーの顔が見れなくてつい素っ気ない言い方になってしまう
あぁ、本当に自分が嫌だ。どうしたいのか纏まらないのに
「あっ、A！無事でよかった！怪我はないんですか！？」
「たしぎちゃん。私は大丈夫だよ、忙しいのに来てくれてありがとう」
「いえいえ！大将青雉から連絡があって…
「たしぎ！！」
「あっ…」
「クザンさんから？」
「す、すいません！私も海賊たちを連行してきます！」
慌てて船に戻っていくたしぎを見ながら、どういう事かとスモーカーに尋ねるとガシガシと頭をかきながら大きく煙を吐き出した
「はァ…。今朝クザンさんから連絡があってな。お前が元気ねェから行ってやれと言われたんだ。それで向かってる途中に応援要請が入ったって訳だ」
「なんで…。あ、そういえば朝…」
今朝本部でクザンとぶつかった事を思い出した
そんなに態度に出ていたんだろうか…気を使わせてしまったと少し後悔し、小さくため息をついた
「昨日、なぜ出なかった？」
「っ、…寝てたの。気付かなかっただけ」
「おィ、A」
本当は気づいていたのに今のこんな自分でスモーカーと話せなくて、嘘をつき背中を向け船へ歩き出した
だが、すぐに腕を捕まれ動きをとめる
振り解けばいいのに、それが出来なくて唇を噛み締めた
「やっぱり泣いてんじゃねェか」
「っ…」
顔をのぞき込まれ、勝手に流れた涙をスモーカーの指が優しく拭う
頭と心の反応は反対で、やっぱり会ってしまえば、触れてしまえば好きが溢れて、そばに居たい気持ちがどんどん涙として流れ出てしまった
「頼れって言っただろうが。俺じゃァ頼りねェか？」
「っちがう！…ごめんっ。なんにも無いの…大丈夫だから…」
言えないよ。でももし言ったら、あなたは正義を貫くの？そしたらもう…
それなら今は、一緒にいれる内は…
「大丈夫だよ、スモーカーさん。ありがとう」
目に涙をためて、いつものように笑ってみせた
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作者名：Ancop | 作成日時：2023年3月16日 15時
