日華(2) (ページ3)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:19,504 hit

あなたの欠片-3 ページ3

キッチンが無くて不便だと気付いたのは意外とすぐだった。

安いモーテル。
安い割には良いなんて思ったけどやっぱり長居は出来ないなと何日目かのコンビニでお弁当を温めて思った。

ここ2日の日課になりつつある
夕食はコンビニ弁当をコンビニで。

本当は自分で作って食べたいし
何なら食堂に入って出来立ての物を食べたいと思うけれど
これから家を探さなきゃいけないし
今の一番の敵は贅沢という事だ。

夕食を食べ終えた私はのんびりモーテルへの帰路につく。

別段急ぐ必要も無い。
それはそれで複雑。

もし私が今ジヨンさんの家にいたら
今頃は夕食の支度に勤しんでいて
そうこうしてるうちにジヨンさんが帰って来て

なんて叶わない妄想が途切れなくて少しだけ心が痛い。

自分から出てきたくせに
しみったれてるなんて世話ないわ…苦笑

直でモーテルに帰ると気が滅入りそうで
寄り道する事を決めた。

週末の夜。
お洒落した若者達が夜の街を楽しそうに闊歩していて
羨ましいなと思う。

だから私も1人だけどそれに便乗して
少し入るのを躊躇しそうなお洒落なカフェの扉を開けた。

「カフェモカを。」

本当はショーケースのケーキも美味しそうだったが
先にも述べた様に贅沢は出来ない私は
カフェモカだけ注文して隅の席に座った。

一人で来店しているのは私だけだった。

少し心細い気もしたが
週末だし仕方ない事。

手入れのされた中庭があって
色とりどりの花達と3メートルくらいの木々達が
ライトアップされていた。

窓ガラスに反射して映る自分の顔。

「ジヨンさん…何してるかな…」

眼鏡を見て思い出す。

勝手に出て行った私の事など
もう何とも思ってないかもしれない。

眼鏡の智で光る石がジヨンさんの欠片の様な気がした。
私の勝手な思い込みだけれど。

「ねぇこれ本当？」

ぼんやり腑抜けた顔を眺めていると
背後が急に賑やかになった。

2種類の女性の声。

私のカフェモカを運んで来た店員が
その女性に注文を聞くと2人同時に'アイスコーヒー'と言った。

「本当にジヨンさんと復縁したの？」

次に聞こえた言葉にカフェモカを持とうとした手が止まった。

私の神経が全て背中に集中する。