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驚いて「わっ!」と声を上げるとこんな近くに私がいると思わなかったらしくミュン君も驚いていた
一体何をしにやってきたのだろうと思案していると彼は一息ついて口を開いた
『先生っ!さっきはありがとうございました』
何だ態々この少ない休み時間を使ってお礼を言いに来てくれたのかと感動してしまった
「どういたしまして」と答えると彼は照れくさそうに俯いた
あっそうだ
「ミュン君」
『はいっ』
「貴方足はどうだったの?捻挫?」
『あ…はい。でも軽いやつでした』
「それでも走っちゃダメでしょ!安静にしてないと治らないわよ?」
そう叱ると朝叱られてた時と比べ物にならないぐらい落ち込んでしまった
そんなにキツい言い方だったかしら、と内心あせあせしていたけれど本当のことなのだから仕方が無い
暫くして『ごめんなさい』と彼が言ってくれて少しほっとした
「はい。これから治るまで走っちゃダメよ?それに遅刻ギリギリの登校も間に合う為に走らないといけなくなるからダメ。分かった?」
彼にとって難しい事を言ってしまったけれど少しでも言う事を聞いてくれたらいいなという願望を込めた
すると彼は以外にもすんなりと『分かりました』と答えた
あまりにもあっさりした返事に流されてしまったと不甲斐なく思った
ミュン君はちらりと時計を見たと思ったら『先生、また来ます』と言って歩いて教室に戻ってしまった
「…不思議な子…」
それからミュン君は休み時間毎にやって来て『先生、お腹は大丈夫?』だとか『赤ちゃんいつ頃に産まれるの?』とかそういった質問を沢山私に投げかけた
まさかまたの意味がこんなスグだと思ってもいなかった私は度肝を抜かれていた
そして一番驚いたのは彼は次の日から本当に私の言いつけをきっちりと守った事だった
朝礼の15分前には登校し10分前には机に座って先生が来るのを待っているという優秀ぶりを見せたことにより担任の先生もあのミュン君に目をつけていた先生も嘘みたいで信じられないとショックを受けたぐらいで余程手を焼いていたのだろう
そんなことがあってから早二週間…ミュんくんの足は完全に治り、休み時間毎に保健室に遊び来るのも健在だった
『先生、もうすぐ体育祭ですね』
なんて保健室の備品を触りながら彼は言う
いつの間にこんなに馴染んでしまったのか…
「そうね、怪我をする子が増えるわ」
『忙しくなりますね』
「そう言えば体操服ね、次は体育?」
『はい』
「怪我しないでね」
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作者名:nagi | 作成日時:2021年5月12日 15時