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赤ちゃんのまだ薄いふわふわした毛を撫でていると先生が口を開いた

「ミュン君、あの時は本当にありがとう」

『いえ…旦那さんのこと殴ったりしてすいませんでした』

「いいえ…すっきりしたわ」

そういって先生は少し寂しそうに微笑む

そんな姿を見て自分はとんでもない事をしてしまったのでは無いかと申し訳なく思ったが、なんて言葉にして伝えればいいのか分からず口を閉ざす

「別れたの」

『え…』

「私たち、二人で過ごしていくことにしたの」

ひょうと冷たい風が僕と先生の間を通り過ぎ、赤子がぶるりと震えた

先生は赤子に掛かっている毛布を掛け直し僕の顔を見て心底嬉しそうに笑う

ああ、幸せなら、それで良かった

『その子、男の子ですか?』

「ええ」

『名前は?』

「A」

『…え?』

その瞬間世界が止まった

「ミュン君みたいに素敵な子に育って欲しいから、A」

愛おしそうに子供を見つめる視線に涙が出そうになる

まるで、自分に向けられているような錯覚に陥りそうだ

『そう、ですか…』

先生はこの先ずっと、僕と同じ名前の子供のことを呼び続ける

それならば先生はずっと僕のことを忘れられないだろう

そんなことを考える自分が気持ち悪かったけれど、嬉しかったんだ

『先生っ、幸せになってください…っ』

「勿論よ。ミュン君って泣き虫ね」

『先生の前だけです…』

「そう?」

先生は取り出したハンカチで伝う涙を拭ってくれた

「貴方のこと、応援してるわ」

『はい』

「頑張ってね」

『はい』

白く細い綺麗な指が僕の頭に伸びてくしゃりと髪を撫でる

それが嬉しくて僕は涙だらけ顔でくしゃりと笑う

遠くから聞こえるヒョン達の声に先生が目線をやり、その手を離す

「いってらっしゃい」

『いってきます』

先生に見送られてヒョン達の元へ向かうと驚いた顔をしたが、僕の笑った顔を見て皆抱きしめてくれた

「卒業おめでとう!」

『ありがとうございます!』

和気藹々とヒョン達と話していたら後ろから肩にポンと手を置かれて驚いて振り向く

「A、卒業おめでとう」

『ミンギュ!』

久々に見た兄の姿にAは飛び跳ねて喜び自分よりも大きな身体に抱きついた

今まで見た事無い喜びようのAにメンバー達はぽかんとその様子を見つめる

『ミンギュ、なんで来たの?』

「お前の卒業式だってPDから連絡が来たから」

『そっか!』

こんなに幸せな日は無いとAは喜び、他の保護者に頼んで皆で写真を撮って貰った

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作者名:nagi | 作成日時:2021年5月12日 15時

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