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暫くして泣き止んだ彼の涙やらをハンカチで拭いている時にまつ毛が長くて羨ましいなぁと思って気がついた
この子、物凄く綺麗な子だわ
例えるならば正に天使だった
思わずハンカチを持った手を止めて見蕩れてしまった
『先生…?』
動かなくなってしまった私を不審に思ったのか伏せていた長いまつ毛が上がり、目が合った
その目は泣いたことによって真っ赤になって腫れていてうさぎみたいだった
「目、真っ赤になっちゃったね」
『泣いたら目って腫れるんですね』
「泣き方にもよるんじゃないかしら」
『そうなんですか?』
「多分ね」
冷凍庫から保冷剤を出してガーゼに包みその子に渡す
『これは…?』
「目に当てておいたら少し腫れがマシになるはずよ」
『ありがとうございます』
暫くしてそろそろ腫れもひいたんじゃないかと様子を見てみるとだいぶマシになっていたので授業に戻るように言うと少し嫌そうな顔をして立ち上がった
『…先生、また来てもいいですか?』
本当は怪我をしていない子は保健室に来てはいけないのだけれど駄目とは言えなかった
でも生徒のメンタル面を支えるのも仕事内容には入っているし…
「…ええ、いつでもおいで
この子と一緒に待ってるわ」
『ありがとうございます』
彼はここに来て初めて笑顔を見せた
その笑顔に魅せられて咄嗟に声を掛けてしまった
「待って、あなた名前は?」
『ミュン・Aです』
そう言って保健室を出ていった彼は私が三年間この学校に務めていて初めて出会ったタイプの子供だった
直感的に今日のこの出会いは偶然でなく必然であの子がこの同じ様な日々を変えていくような気がした
けれど何故だかそれに恐怖は覚えなかった。逆に落ち葉に風が吹く様な、そんな清々しい気持ちになった
生徒達の部活動も終わり私の仕事も終わりを迎えた
職員室に保健室の鍵を返しに行くと丁度体育科の先生とばったり鉢合わせた
「お疲れ様です」
と挨拶をすると大きな声で「お疲れ様です!」と返された
おお…流石…
「そう言えば今日はミュン・Aがお邪魔しましたでしょう」
「ああ、はい。どうやら捻挫みたいで…」
「全く軟弱な奴め…」
「ふふふ…でもとても綺麗な子ですね」
「だからこそ鍛えんといかんのですよ!」
「まぁ、そうかもしれませんね」
「アイツは毎朝遅刻ギリギリに登校する癖がありまして…最近はジョングクが引っ張ってくれているのでマシになりましたが参ったもんです」
あらら、意外だわ
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作者名:nagi | 作成日時:2021年5月12日 15時