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「Aヤー、ヒョン達も遅れて行くからね」
『はい!』
「Aヒョン、卒業式まで遅刻は笑えないから早くして!」
『そうだね、流石に遅刻したくない』
『「いってきまーす」』
「いってらっしゃい」
二人はいつもの様に満員電車に乗り込み、校門まで疾走した
けれどいつもより余裕を持って登校できた僕らは校門で首根っこをつかまれることもなく教室へと向かうことが出来た
「おはよう、A」
『テオ、おはよう』
「遅刻王子も流石に卒業式には余裕を持ってくるんだな」
『返答しずらいんですが』
ワザと眉を寄せテオの顔を見ると軽く笑い飛ばされてしまう
『今日で卒業かぁ』
「あっという間だったな」
『もうテオと会えなくなると思うと寂しいな』
「そうだな」
普通と友達ならば卒業してもまた会おうねだなんて言い合うのだろうけど僕らは違う
卒業すれば僕はもっと忙しくなるだろうしテオは家を継ぐために色々と忙しくなるみたい
「ま、たまに連絡ぐらいは入れるよ」
『うん』
ガラリと重たい音がして担任の先生がやってきて体育館に移動するから廊下に並べと言った
背の順に並び体育館の前で待っていると中から音楽が鳴り響き大きなドアが開き音楽に合わせて並べられているパイプ椅子の前に立ち、指示とともにそれに座る
教職員の所にもしかしたら先生が来ていないかと探してみるが勿論姿は見当たらない
そりゃそうだよな…
式の最中、どうしても先生の事が思い出されて仕方がなかった
長い長い校長の話や卒業証書授与式を終え再び順番に退場してゆくと、保護者席にヒョンたちを見つけた
にこりと微笑み目を逸らそうとした時、ふと横目に子供を抱えた先生の姿が見えたような気がした
しかし、止まることなどできずそのまま体育館から退場してしまった
自分は都合のいい幻覚を見たのだと、思い違いだと言い聞かせて最後のHRを過ごした
最後、校門を通る時に二年生が作ってくれた花のアーチを通り抜けるとジョングクの姿を見つけた
『ジョングク、ありがとうね』
「卒業、おめでとうございます」
『うん』
アーチを片手に持った彼の頭を撫で、アーチの先にいるヒョンたちの所へ向かう
「ミュン君!」
『え…』
「卒業おめでとう」
暫く聞いていなかった懐かしい声に期待を孕んだ瞳で振り返ると子供を抱き太陽のように微笑む先生がいた
『先生…』
先生のそばに行き、すやすやと眠る子供をみると自然とかわいいという言葉が口から出た
『かわいい』
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作者名:nagi | 作成日時:2021年5月12日 15時