『屍鬼』 小野不由美さん 盛大なネタバレアリ ページ5
十二国記と同じく小野不由美さんの『屍鬼』
私が衝撃を受けた大好きな小説について語りたいと思います。
今回も盛大にネタバレしていきます。それから考えが上手くまとまっていなかったり、すでに読んだ人ではないと意味がわからない文章になると思います。
＊＊＊
屍鬼を読み終えた人の間で
「屍鬼が悪いのか、人間が悪いのかわからなくなる」
「いやいや、どう考えて屍鬼は悪だろ」
というようなやり取りをよく見る。
なぜ同じ物語を読んだはずなのに、こうも違いが生まれるのか。
それは読むときの視点。もっといえば肩入れの仕方、どちらに感情移入したか、が違うからだと思う。
人間の視点(敏夫)で読んだ人は、人間を襲う屍鬼を悪とみなす。
人間の視点ではなく、もっと大きな、いわば神のような視点で読んだ人は、
屍鬼が生きるために人間を襲うことを悪とは言い切れない。
なぜならば、屍鬼を悪だと言えば、生きるために牛や豚や鳥や植物など、様々な生き物を殺す人間も悪だと言わなければいけなくなるから。
ただ、今回外場村で沙子ら屍鬼が行った行為は、残虐だと批判されても仕方のないことだと思う。
彼女らの行為は明らかに「生きるための行為」にとどまっていないからだ。「帰る場所をつくるため」に、必要最低限以上の搾取をしてしまっている。
そして「人が屍鬼に殺される描写より、人が屍鬼を殺す描写のほうが、残虐に書かれいて、作者の意図があからさまで良くなかった(意訳)」といっている人がいたのでそれについて一言。
そういう描写をしたのは「読者に人間の視点から離れてほしかった」からだと思う。私たちは人であり、普段そのことを疑うことはないし、人外の生物が登場したときは人外の生物に感情移入するのではなく、その生物に驚く人間の方に感情移入、共感をする。
それが当然のことだ。
そんな読者に、人を襲う人外の生物(屍鬼)の視点から人の行いを見させるには、屍鬼側の心理描写を丁寧にするとともに、人の残虐性を描写しなければならない。
『月の影 影の海』 陽子が失ったもの、得たもの→←泰麒の性格 続編
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