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「カズがやり遂げたい事を、斎藤兄弟に重ねてるんじゃないの?」
相葉さんの両瞳は……俺の心の奥底を、しっかりと捉えているみたいだ。
「ねぇ……カズ。それって…」
「クライアントに、会ってくるわ。」
壁掛け時計を、左手の親指で差して…ソファーから立ち上がる。
一刻も早く…相葉さんの両瞳から、逃れたかった。
「………いってらっしゃい。」
相葉さんの声を、背中で聞きながら…事務所を出た。
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「………何で、ここよ。」
「だって…ニノ、船ダメじゃんか。」
俺の右隣りで…釣堀に糸を垂らしてるスナフキンみたいなおっさん・大野さんが、ムクれた。
「しょうがないでしょうよ、三半規管弱ぇんだから。」
「だから、ココにしたんだろ。」
さっきからピクリともしない浮きを見つめたまま、大野さんは言った。
「知ってんだろ? 監視(み)られてんの。」
相変わらず、浮きを見つめたままの大野さん。
あまりにも飄々とした、その表情(かお)に…こっちが、拍子抜けしてしまう。
「現在(いま)も、監視(み)てるよ。」
大野さんの言葉に、周囲へと注意を向けると…
確かに。
以前から感じていた視線に、気付いた。
「ニノ…まだ、気にかけられてんだね。」
大野さんは、不意に俺へと顔を向け…ふにゃりと、微笑(わら)った。
「やめて下さいよ。気持ち悪い。」
「そう? ニノも、まんざらじゃねぇのかと思ってた。」
「はぁ⁉」
「ちょっ、声でけぇよ。魚、逃げんじゃんか。」
「魚なんて、さっきから“さ”の字もいないでしょうよ! それより、今のは何ですか⁉ どういう意味⁉」
「監視付けてまで、ニノの動向探ってるくらい、ニノに執着してるって事だろ? 同じくらい。ニノだって、あっちの事調べまくってんじゃんか。」
大野さんの両眼から、温かさが消えた。
「………向き合えんの?」
普段、何考えてんのか全く分からないくらい、ふわふわした雰囲気のこの人が、この両眼(め)をした時の凄さを…俺は、よく知っている。
「あっちは……本気でくるよ。」
「分かってますよ。」
「………そっか。なら、いい。」
大野さんの両瞳は、また…水面へと向けられた。
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愁(シュウ)(プロフ) - 舞花さん» サスペンスとか、ミステリーを書くなら、注意書きして書きますけど…短編なのでね。(苦笑) なんだかんだで、無事(?)12人書き終えました。雨に濡れた健二郎さんが浮かばなければ、始まらなかった短編集。健二郎さんに、感謝です。(笑) (2017年11月8日 20時) (レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
舞花(プロフ) - 愁(シュウ)さん» そうなんですね(笑)それに歪む顔が見たいとか?(笑)萌えます(≧∇≦*)逝っちゃうと確かに出しにくいですね(笑) (2017年11月8日 20時) (レス) id: 06beefc88f (このIDを非表示/違反報告)
愁(シュウ)(プロフ) - (続き)岩ちゃんの先輩…三代目の中からにさせて頂こうかと思いましたが…逝ってしまうポジションなので、ちょっと限定しづらくて…ぼやかしました。(苦笑) (2017年11月8日 20時) (レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
愁(シュウ)(プロフ) - 舞花さん» 舞花さん。早速、ありがとうございます!m(_ _)m なんだか、こんな感じに仕上がってしまいました。(苦笑) 根っからのドSな私。好きな俳優さんには、切なさ・悲しみ・苦しみを演じて欲しくなる性分なんです。(^_^;) (2017年11月8日 20時) (レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
舞花(プロフ) - 愁さん、こんばんは(^^)うーん、切ない…岩ちゃん、切ないぞ。でも切ないのが岩ちゃんには似合ってるんですよね。岩ちゃんの先輩は誰だったのだろうって思いました(o^^o) (2017年11月8日 20時) (レス) id: 06beefc88f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愁(シュウ)
作成日時:2017年10月3日 1時