＊ ページ35
・
軋んだ、ベッドの音で…
彼女が、体を起こしたのだと気づく。
しばらく寝たフリをしてから、そっと目を開けると…
今夜も…
Aさんは……
雨を見ていた。
あの人を、想いながら………
・
華奢な白い背中へ、腕を伸ばし…腕の中に、閉じ込める。
俺から、離れて行かないように………
・
「また……独りで、泣いてる？」
冷たい身体が…
嗚咽を堪える微かな震えを、伝えていて………
あの人の存在を…
その、大きさを………思い知る。
「俺のことは、気にしなくていい…って、言ってるのに。」
・
先輩。
何で……Aさんを、独りにしたんだよ。
もう、此処にいないあなたに…
俺は………勝負すら、させてもらえない。
こんなに、そばにいるのに…
Aさんの胸の中には、いつも………あなたがいる。
そう思ったら、たまらなくなって…彼女の左胸に、触れた。
「こうしたら……疵が全部、消えてなくなればいいのに………」
「剛典くん…」
「悲しいこと…辛い気持ち……全部、消してあげたい。でも………出来ない。」
・
先輩。
どうして…Aさんを、悲しませた？
どうして……………
・
「Aさん…お願いだから、独りで泣かないで。俺、言ったよね？ ずっと、Aさんのそばにいるって。」
「剛典くん…」
「分かってるから。Aさんが…こんなになるまで本気で愛した人を、忘れるなんて出来る訳ないじゃない。 俺だって、そんなこと望んだりしない。」
「……」
「先輩と張り合おうなんて、思ってないから。」
静かに腕を解いて、Aさんの身体を向き直らせたら…やっぱり、頬に涙の跡がある。
「俺のこと…利用して。」
彼女の頬に、指先を伸ばした。
「Aさんの気持ちが、少しでも楽になるなら…そのために役に立てるなら、いくらだって構わない。俺のこと、利用してよ。」
息が掛かるほどの距離で…Aさんの両瞳が、揺れている。
「Aさん…」
・
俺は………
後、どれほど……
彼女への想いを………
閉じ込めて、いられるのだろう………
・
Aさんの唇にそっと、唇を重ねた……………
・
《 後書き 》→←scene 12：『真夏の通り雨』（T.Iwata）
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愁(ｼｭｳ)(プロフ) - 舞花さん» サスペンスとか、ミステリーを書くなら、注意書きして書きますけど…短編なのでね。（苦笑） なんだかんだで、無事（？）12人書き終えました。雨に濡れた健二郎さんが浮かばなければ、始まらなかった短編集。健二郎さんに、感謝です。（笑） (2017年11月8日 20時) (
レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
舞花(プロフ) - 愁(ｼｭｳ)さん» そうなんですね(笑)それに歪む顔が見たいとか？(笑)萌えます(≧∇≦*)逝っちゃうと確かに出しにくいですね(笑) (2017年11月8日 20時) (レス) id: 06beefc88f (このIDを非表示/違反報告)
愁(ｼｭｳ)(プロフ) - （続き）岩ちゃんの先輩…三代目の中からにさせて頂こうかと思いましたが…逝ってしまうポジションなので、ちょっと限定しづらくて…ぼやかしました。（苦笑） (2017年11月8日 20時) (レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
愁(ｼｭｳ)(プロフ) - 舞花さん» 舞花さん。早速、ありがとうございます！m(_ _)m なんだか、こんな感じに仕上がってしまいました。（苦笑） 根っからのドSな私。好きな俳優さんには、切なさ・悲しみ・苦しみを演じて欲しくなる性分なんです。(^_^;) (2017年11月8日 20時) (レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
舞花(プロフ) - 愁さん、こんばんは(^^)うーん、切ない…岩ちゃん、切ないぞ。でも切ないのが岩ちゃんには似合ってるんですよね。岩ちゃんの先輩は誰だったのだろうって思いました(o^^o) (2017年11月8日 20時) (レス) id: 06beefc88f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：愁(ｼｭｳ)
作成日時：2017年10月3日 1時
