scene 12：『真夏の通り雨』（T.Iwata） ページ34
・
窓を叩く雨音に紛れて、ゆっくりと身体を起こす。
背中越しの気配が、動かない事を確かめ…ホッとしながら…ガラス越しの雨を、眺めた。
・
こんな、雨の夜は…
やっぱり…
あの人を、思い出してしまう………
・
私を…背中から抱きしめた、温かい腕。
「また……独りで、泣いてる？」
少し掠れた…
それでも……
いつもと変わらない、柔らかな声が…耳に掛かる。
「俺のことは、気にしなくていい…って、言ってるのに。」
温かい両腕は…
冷え切った私を、優しく…しっかりと、包み込んでいて。
背中越しに…彼の体温と、鼓動を感じる。
やがて………
彼の手が…無防備な私の左胸に、触れた。
「こうしたら……疵が全部、消えてなくなればいいのに………」
「剛典くん…」
「悲しいこと…辛い気持ち……全部、消してあげたい。でも………出来ない。」
岩田剛典君は………あの人の、後輩。
あの人が、いなくなってから…
心も体も、ボロボロの私を……ずっと、支えてくれている。
「Aさん…お願いだから、独りで泣かないで。俺、言ったよね？ ずっと、Aさんのそばにいるって。」
「剛典くん…」
「分かってるから。Aさんが…こんなになるまで本気で愛した人を、忘れるなんて出来る訳ないじゃない。 俺だって、そんなこと望んだりしない。」
「……」
「先輩と張り合おうなんて、思ってないから。」
剛典君は、静かに腕を解いて…私を、彼の方へ向き直らせた。
「俺のこと…利用して。」
彼の指先が…私の頬に、触れる。
「Aさんの気持ちが、少しでも楽になるなら…そのために役に立てるなら、いくらだって構わない。俺のこと、利用してよ。」
頬を離れた指先の、代わりに…彼の、唇が触れた。
「Aさん…」
息が掛かるほどの、距離で…剛典君の、綺麗な両瞳を見つめる。
・
私は………
後、どれほど……
彼を………
傷つけなければならないのだろう………
・
剛典君の唇が、優しく重なった……………
・
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愁(ｼｭｳ)(プロフ) - 舞花さん» サスペンスとか、ミステリーを書くなら、注意書きして書きますけど…短編なのでね。（苦笑） なんだかんだで、無事（？）12人書き終えました。雨に濡れた健二郎さんが浮かばなければ、始まらなかった短編集。健二郎さんに、感謝です。（笑） (2017年11月8日 20時) (
レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
舞花(プロフ) - 愁(ｼｭｳ)さん» そうなんですね(笑)それに歪む顔が見たいとか？(笑)萌えます(≧∇≦*)逝っちゃうと確かに出しにくいですね(笑) (2017年11月8日 20時) (レス) id: 06beefc88f (このIDを非表示/違反報告)
愁(ｼｭｳ)(プロフ) - （続き）岩ちゃんの先輩…三代目の中からにさせて頂こうかと思いましたが…逝ってしまうポジションなので、ちょっと限定しづらくて…ぼやかしました。（苦笑） (2017年11月8日 20時) (レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
愁(ｼｭｳ)(プロフ) - 舞花さん» 舞花さん。早速、ありがとうございます！m(_ _)m なんだか、こんな感じに仕上がってしまいました。（苦笑） 根っからのドSな私。好きな俳優さんには、切なさ・悲しみ・苦しみを演じて欲しくなる性分なんです。(^_^;) (2017年11月8日 20時) (レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
舞花(プロフ) - 愁さん、こんばんは(^^)うーん、切ない…岩ちゃん、切ないぞ。でも切ないのが岩ちゃんには似合ってるんですよね。岩ちゃんの先輩は誰だったのだろうって思いました(o^^o) (2017年11月8日 20時) (レス) id: 06beefc88f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：愁(ｼｭｳ)
作成日時：2017年10月3日 1時
