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・
『健二郎…』
久々に掛けてきよった、アイツの電話の第一声で…何があったか、全部分かる。
目ぇ瞑ってても辿り着く自信があるくらい、通い慣れたアイツの家へ向かうと…思った通り。
今にも泣きそうな顔しながら、出迎えてくれた。
リビングに置いてある椅子に座って、いつもみたいにアイツが話するんを待っとったけど…
今日は、一向に話そうとせえへん。
今回の相手には、思った以上に本気やった…って事、か。
自分の口から話すんを、待つつもりでおったけど…しばらく雨の音しか聞こえへんかった部屋に、溜息が一つ聞こえたから。
なんか、たまらん気分になって…思わず、声を掛ける。
いつもやったら、それなりに受けて返してくるアイツが…今日は、思い切り突っかかってきよった。
「うっとおしいんやったら、出てく。」
勝手に、言いっぱなして…挙句、出て行こうとしよる。
「どこ行くねん！」
「どこでもええやん！ ほっといてよ！！」
そんなアイツを見るんが初めてやったから、一瞬動きが遅なって…出て行くんを、止められへんかった。
・
文字通り“土砂降り”の雨の中やったけど、傘の事なんか、すっかり忘れとって…
ただ、ただ…アイツを、探した。
雨の向こうに、見慣れた背中を見つけた瞬間…俺の足は、勝手に走り出す。
華奢な右腕を、しっかり掴むと…一瞬ビクッとしながらも、振り返った。
とりあえず無事やった事に安心したら、何やメチャメチャ腹立ってきて…気ぃついたら怒鳴っとった。
「もう…ほっといてよ。」
「ほっとけるか。」
「何でよ！ もう、ええ加減嫌気さしてるんやろ？ 毎度毎度、失恋するたんびにグチグチ言うオンナなんか…ええ加減、うっとおしいやろ！」
「あぁ！ うんざりしとうわっ！！」
うんざりなんや。
他のヤツの事で、落ち込むおまえ見るんも…
自分の気持ちに気づいとうクセに、言葉に出来ん俺自身にも…
俺から離れようとするAの腕を引き寄せて、抱きしめた。
「は、なして…」
「離さへん。ちゃんと、泣け。」
「健二郎…」
「ちゃんと泣いて、早よ忘れろ。」
激しい雨の中…
腕の中におるAの嗚咽を聞きながら、闇空を見上げる。
“俺かて………泣きたいわ。”
・
《 後書き 》→←scene １：『 雨音 』（K.Yamashita）
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愁(ｼｭｳ)(プロフ) - 舞花さん» サスペンスとか、ミステリーを書くなら、注意書きして書きますけど…短編なのでね。（苦笑） なんだかんだで、無事（？）12人書き終えました。雨に濡れた健二郎さんが浮かばなければ、始まらなかった短編集。健二郎さんに、感謝です。（笑） (2017年11月8日 20時) (
レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
舞花(プロフ) - 愁(ｼｭｳ)さん» そうなんですね(笑)それに歪む顔が見たいとか？(笑)萌えます(≧∇≦*)逝っちゃうと確かに出しにくいですね(笑) (2017年11月8日 20時) (レス) id: 06beefc88f (このIDを非表示/違反報告)
愁(ｼｭｳ)(プロフ) - （続き）岩ちゃんの先輩…三代目の中からにさせて頂こうかと思いましたが…逝ってしまうポジションなので、ちょっと限定しづらくて…ぼやかしました。（苦笑） (2017年11月8日 20時) (レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
愁(ｼｭｳ)(プロフ) - 舞花さん» 舞花さん。早速、ありがとうございます！m(_ _)m なんだか、こんな感じに仕上がってしまいました。（苦笑） 根っからのドSな私。好きな俳優さんには、切なさ・悲しみ・苦しみを演じて欲しくなる性分なんです。(^_^;) (2017年11月8日 20時) (レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
舞花(プロフ) - 愁さん、こんばんは(^^)うーん、切ない…岩ちゃん、切ないぞ。でも切ないのが岩ちゃんには似合ってるんですよね。岩ちゃんの先輩は誰だったのだろうって思いました(o^^o) (2017年11月8日 20時) (レス) id: 06beefc88f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：愁(ｼｭｳ)
作成日時：2017年10月3日 1時
