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「…聖生くん、おはよ」
Aは翌朝少し寝坊をした。朝起きて食堂に行くと、既に定位置に座りコーヒーを啜る大外がいた。
「ああAさんおはよう。少し遅かったみたいだけど、よく眠れたかい」
彼は、女性なら誰でも惚れてしまいそうな爽やかな笑みを浮かべた。そして、Aに正面の席に座るよう促した。
「ええお陰様で。昨日は世話をかけたわね」
Aは厨房のルリにコーヒーを注文し、彼の向かいに腰を下ろした。
そして、目の前に座るイケメンを見つめる。
(…この子に聞きたいことがあったはずなんだけど…なんだっけな)
「…なんだい、人の顔を見つめたりして」
「ん?見とれてただけよ。かっこいいなーって」
「ほざけ」
Aは、寝る前に大外に対して抱いた違和感の正体を思い出すことが出来ず、誤魔化すことしか出来なかった。
大外と一頻り談笑していたら、注文したコーヒーを持って阿鳥が現れた。
「ああ、阿鳥さん」
「あ、遥斗さんおはよう」
大外とAがあっさりそう挨拶すると、阿鳥はわかりやすく挙動不審になった。
「お、大外様、茜様、おはよう、ございます。こ…ちら、ご注文…の、コーヒーで、ございます」
コーヒーをテーブルに置かんとする阿鳥の手が震える。
「大丈夫なの遥斗さん?昨日ちゃんと寝れた?」
Aが彼の顔を見上げてそう問いかけると、阿鳥はさらに取り乱した。
「あっ…す、すみません」
そしてその後彼は何度か深呼吸をして姿勢を整え、意を決したように頭を深々と下げた。
「大外様、茜様、昨日は申し訳ありませんでした!
…どれだけお詫びしても足りません。どうか、俺を殴ってください」
彼の言葉を受け、Aは大外と顔を見合わせた。2人とも、きょとんとした顔をしている。そして、Aからそっと話し始めた。
「…あの、殴らないので顔を上げてください。私、怒っても傷ついてもいないですよ」
「そうですよ。それに…この女はともかく僕に謝ることなんて何もないじゃないですか。どうしてそんな、殴れだなんて言うんです」
「どうしてだなんて…!
だって、大外様と茜様はお付き合い…されてるんですよね。
そんな大外様の前で茜様を襲うなんて、許されることではないですよ。ああ、俺は何てことを…申し訳ありません、申し訳ありません」
「…私が?」
「…この女と?」
阿鳥の言葉を受け、また2人は顔を見合わせた。
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更紗(プロフ) - おもちさん» 温かいコメント、そして作品を読んでくださりありがとうございます!すごく嬉しくて気づいたときちょっと泣きそうになりました(T_T) お好みに合うのであれば幸いです♪今後も緩くですが頑張りますので、引き続き楽しみにしていただけると嬉しいです^^ (2022年7月31日 2時) (レス) id: a475ea03b6 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - SEECさんの作品で短編集なんてなかなか見ないものなので、読み始めたのですが、この甘ったるすぎない少し甘酸っぱい雰囲気がとても好きになりました!応援しております、これからも無理しすぎないように更新頑張ってください!! (2022年7月27日 21時) (レス) @page13 id: 19c9f4b836 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:更紗 | 作成日時:2021年7月28日 23時