ワンクール・ラブ*阿鳥遥斗*【誰ソ彼ホテル】●11 ページ1
「…」
「…」
大外は、部屋まで送る、と言ってAと共に歩き出した。
「…なんだ、黙りこくって。阿鳥さんが普通の男と同じだとわかって傷ついたのか?」
特に言葉を発することなく後ろから従順についてくるAにしびれをきらし、彼は歩きながら振り返ってそう問いかけた。
「え?あ、ううん。そういう訳じゃないんだけど…」
Aは上の空だった状態から急に引き戻されたかのように、一瞬驚いた表情を見せた。
「真面目に見えた阿鳥さんも、酔ったらあんな風になるんだなあって。
それに、恋愛にトラウマがあっても身体は正直なんだってこと、ちょっと驚いちゃって」
Aが少し伏し目がちにそう答えると、大外は顎に手を当て考える素振りをした。
「…うん、そうだね。君の言うとおり、彼の身体は素直に君に反応したんだろう。
けれどね、彼の名誉のために言っておくと…。彼は、女を滅多に抱かないんだよ」
「貴方と違って?」
「やかましいよ。…彼は、言い寄ってきた女なら誰とでも付き合ったかもしれないけれど、身体は別。
華やかな容姿をしている阿鳥さんはすぐ勘違いされるけれど、彼は真面目だから、すぐに手を出したりはしないんだ。出来てすぐの彼女とは寝ないんだよ。
だから、彼に激しく求められることを期待して言い寄った"自称良い女"たちは拍子抜けして離れていく」
「…そうなんだ」
Aは色々と頭が混乱し、生返事を返す。
「そんな彼にあんな風に求められたのは…
僕が知る限り、君だけだよ。
さあ、君の部屋だ」
前を歩いていた大外が立ち止まる。
「あれ、もうついたのか…ありがとう」
Aはポケットから鍵を取り出してドアを開けた。
「阿鳥さんの話ばかりしてたけど、君だって飲み過ぎだからね。よく休むんだよ。それじゃ」
「…ありがと聖生くん。おやすみ」
大外はAを部屋に押し入れ、自身は踵を返して去っていった。
「…ふう」
Aは深呼吸をし、そのままベッドの方に倒れ込もうとした、が…
(…あれ?)
1人になったAは、大外の話に含まれていた不可解な点にふと気付いた。
Aは再びドアを開け、外に彼の姿を探す。
「ねえ待って聖生く…っ!
…いない」
廊下を見渡すも、既にそこに彼の姿はなかった。
Aは部屋に戻って今度こそベッドに横たわる。
(…どうして)
どうして彼が、阿鳥の肉体関係のことなんて知っていたのか。
不穏な気配を感じたが、限界だったAはそのまま眠ってしまった。
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更紗(プロフ) - おもちさん» 温かいコメント、そして作品を読んでくださりありがとうございます!すごく嬉しくて気づいたときちょっと泣きそうになりました(T_T) お好みに合うのであれば幸いです♪今後も緩くですが頑張りますので、引き続き楽しみにしていただけると嬉しいです^^ (2022年7月31日 2時) (レス) id: a475ea03b6 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - SEECさんの作品で短編集なんてなかなか見ないものなので、読み始めたのですが、この甘ったるすぎない少し甘酸っぱい雰囲気がとても好きになりました!応援しております、これからも無理しすぎないように更新頑張ってください!! (2022年7月27日 21時) (レス) @page13 id: 19c9f4b836 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:更紗 | 作成日時:2021年7月28日 23時