検索窓
今日:4 hit、昨日:4 hit、合計:10,854 hit

9 ページ49

迂闊だった、とAは後悔した。
今まで一緒に飲むのが大外ばかりだったから、完全に気を抜いていた。

「あ、の、瑪瑙さん、私どうしたら…」
「あら?彼はそのために待っててくれたんじゃないの?ね、そうよね」
瑪瑙はAに向かって優しく微笑むと、ピアノを背に座る男にウインクしてみせた。
すると彼はわかっていたかのように席を立ち、Aの傍に寄った。

「…ええ、貴女の言うとおりですよ、瑪瑙さん。
やれやれ。世話の焼ける女だな、君は」
「聖生、くん…」

そして阿鳥を抱き起こして支えた。
「君はそっちの肩を。ほら、せーの」

2人で両脇から支えたら、Aの身体への負担はぐっと軽くなった。

「では瑪瑙さん、失礼しますね」
「ええ。Aちゃんを頼むわよ」
「瑪瑙さん、御馳走様でした」
「またいらっしゃい」

瑪瑙に送り出され、阿鳥を挟んだ2人はバーを出た。

「君は大丈夫なのかい?結構飲んでいただろう」
「ああ、今日はソーダ割りだから昨日ほど飲んでないのよ」
大外は明らかに「そういうことじゃない」という顔をしたが、流した。

「ふうん、ならいいけど。君、本当に気を付けなよ。
僕以外の大概の男からしたら、君みたいなのは大好物だから。阿鳥さんだって例外じゃなかったろ?」

「え、そう?彼はそんな」
「鈍感だな君は。やっぱりバカだよ…

ああ、ここが阿鳥さんの部屋だね。阿鳥さん、ポケット失礼しますね…」

彼は鍵を探り当て、穴に差し込んで捻る。
すかさずAがドアを引き、通れるスペースを確保した。

「遥斗さーん、部屋につきましたよ」
「…ん……」
Aが呼び掛けても、彼の応答はない。
「仕方ない、ベッドまで運ぶか…」
「ここに放って帰るなんて失礼出来ないからね。さあ、もう一頑張りだ」

大外の掛け声でもう一度阿鳥の身体を持ち直し、やっとのことでベッドまで運んだ。
彼をベッドに横たえると、どっと疲れが押し寄せる。

「少し水を用意した方が良いかもしれないね。僕が用意するから、君はそのベッドサイドのテーブルを片付けるんだ」
「はーい」

大外と別行動を始めて、しばらくした頃。
「ん……?Aさん……?」
「あ、遥斗さん起きた?」
阿鳥がぼんやりと目を開けた。
「…Aさんと、一緒に寝るんだ」
「え?あっ」
寝起きとは思えない力で彼はAをベッドに引きずり込み、Aは成すがまま彼の腕に抱かれてしまった。

そして
「っ!だめよ、遥斗、さん」

覆い被さるよう、口付けされた。

10→←8



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (23 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
22人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:更紗 | 作成日時:2021年1月22日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。