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土曜日曜と外出を控えて養生すると、私の体調は完全に元の通りになった。
そうして迎えた、月曜日の朝。
学校に行くため、てきぱきと動いて登校の準備をする。
朝食を両親と揃って食べられたことも嬉しく、いつもより順調に朝が進んだ。
いってきまあす、と声を張り上げて玄関を出て、門を開けた。
両親の"いってらっしゃい"が新鮮でこれまた嬉しく、私は軽い足取りで道へ駆け出した。すると、また別のところから声がかかった。
「ちょ、ちょっと待ってよAちゃん!何で先に行っちゃうの…?
悠真ももう少しで準備終わるから、三人で一緒に行こう…!」
声の主は、隣の家の玄関にいた。同い年くらいの女の子。私と同じセーラー服を着ているが、準備が終わっていないのか胸にスカーフがない。
「…?」
ぽかんとして彼女を見つめる。私は、彼女を知っていただろうか?
「真依ちゃんおはよ!わかった、ここで待ってるねー!
…!?」
口が先に動いてしまって戸惑った。
が、そうだ。私は彼女を知っている。幼馴染の、相良真依だ。
私は一人で学校に行くものだと思ってたのだけど、よくよく思い出したらそうではなかった。どうしてこんな簡単なことを忘れてしまっていたのだろうか。
(三人で……)
あまりに実感がなく、少しの間呆けてしまった。
そうこうしている間に、真依ちゃんは男の子を伴って家から出てきた。
「Aちゃん!待たせてごめんね」
「…A、はよ」
低血圧なのか少し気だるげにそう言った彼は、真依ちゃんの双子の兄の相良悠真。
彼のことも知らないつもりだったが、先ほど真依ちゃんから聞いた"悠真"という名前は驚くほどすんなり入ってきた。
「ううん!全然。学校、行こっか」
二人と合流して、三人で通学路を歩く。
ああそうか。これが、私のいつものルーティンだ。何で忘れていたんだろう。
「そうだAちゃん、聞いてよ!
悠真が、変な夢見たって言うの!」
「変な夢?」
「そう。何でも、皆がいない夢だって…」
「…そう」
「真依も、母さんも父さんも、誰もいなかった。
でも俺が捨てられる夢って訳じゃなくて、最初の最初から誰もいなくて…誰か別の人に育てられる夢だったよ」
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作者名:更紗 | 作成日時:2021年1月22日 15時