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私より少し背の低い悠真くん。
彼の顔を覗き込んだはずの私がそこに見たのは、悠真くんの顔ではなかった。
「…っ!?」
目だ。目が4つある。彼の顔には、目が4つも描かれた布のお面がついていた。
「悠真くん、そのお面は……」
「…お面?」
私の奇妙な言葉にそっと顔を上げた彼の顔には、お面などついていなかった。
「…気のせいだったみたい。それより大丈夫?随分顔色が悪いよ」
おかしい。確かに、彼の顔には不気味な布のお面がついていたのに。幻覚?まさかそんな。
けれど詳しく話して彼を不安に追いやるのは気が引けたため、ここでは自分の見たものの真実性の主張は省いた。
「…彼岸花は嫌いじゃない…と思うし、神社だって別に恨みも恐怖もない。神社は幽霊が少ないから、寺よりも過ごしやすいと思っていたけど…
彼岸花と鳥居の景色を見て、何か嫌な風が吹いたというか、何か引っ掛かるんだ。俺、ここ嫌だ」
ここ嫌だ、と言った彼の表情は恐怖の色に染まっている。
私も改めて神社を見る。特段禍々しい気配はない、ということは、彼を苦しめる問題はこの神社事態ではなくまた別の何かだろう。
そして、もう1つ気づいた。班のメンバーが心配そうにこちらを気にしている。悠真くんは本望ではないだろう。
少し名残惜しくはあるが、一刻も早くこの場を切り上げてここを離れた方が良さそうだ。
班長である私は、皆の方に向き直ってわざとらしく地図を掲げ、声高らかに話す。
「あ!探してたお店、この近くみたいだよ!
あっちだって!」
「ほんと?やったあ!」
「さっすが舞原!頼りになるぜ」
「あっちか!行くぞ!」
「おー!」
「あーん皆、待ってよー!…ふう」
班の仲間の意識を悠真くんから逸らせることに成功した私は、彼の方をもう一度見る。
あまり顔色は良くなっていない。
「大丈夫?早くここを離れましょう」
「すまないな…いつも迷惑かけて」
「幼稚園からのよしみでしょ。それに、迷惑なんてかかってないし。
ほら、行こう」
私は悠真くんの荷物を奪って彼の横に並び、先んじて走っていった仲間たちを追って歩き出した。
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作者名:更紗 | 作成日時:2021年1月22日 15時