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「ひどいよ!瑪瑙さんも切子さんも!僕だけ仲間外れにしちゃってさーあ?」
ぷくっと頬を膨らませて支配人が怒る。
まあまあ、とAは宥めたが、すると不幸なことに矛先はAに移った。
「うっ、ううっ、優しいのはAさんだけだあ…
…?まてよ、大外様を現世に帰した…!?
Aさん、なんてことをしたんだ!
そんなことをしたらまたっ…!!!」
文字通り顔色を次々と変えて慌てふためく支配人に両肩を捕まれ、ガクガクと揺さぶられる。
「だ、大丈夫ですよ…!
彼には、悪事と身の破滅が直結する枷を着けてきましたから!人を殺したら地獄へ強制送還なんです。
あれだけ地獄から抜け出すことを渇望していた彼が、わかっていながら地獄に戻るような真似はしないはずですし!
それに、目眩ましの呪いもかけてます。彼と因縁のある人との間では、お互いに知覚が鈍るようにしているので…大外さんが塚原さんや阿鳥さんの姿を見かけても気付くことはありませんし、逆もまた然りです。ですから大丈夫かと…。
大丈夫なんですからお願いです、やめて…」
Aは頭に揺れが響いて船酔いのような気持ち悪さを覚えていた。
「あっ、ごめんね!
そうか、それなら大外さんが阿鳥くんや塚原さんを殺すことはないと考えても良いのかな…」
支配人がパッと肩を離すとともに、Aの身体は大きく揺らいだ。その拍子で元の椅子に座った。
「そうですよ、そもそも殺すどころか会えないんですし、殺したら地獄なんですから……
うっ、ぐ、気持ち悪……」
「いやあ、メンゴメンゴ。つい熱くなっちゃって」
軽く済ませる支配人に若干の嫌悪を感じつつも、全ては阿鳥と塚原の無事のためだろう。従業員想いで情に厚い彼の性格がそうさせたのだと思うと、不思議とそれ以上恨む気にはならなかった。
「…でもAちゃん、貴方馬鹿じゃないでしょう。
こうなること、わかっていたのではなくて?」
ふう、と瑪瑙が煙草をふかす妖艶な様に見とれそうになりながらも、Aは曖昧に言葉を紡ぐ。
「…買いかぶりすぎですよ、ただ思うままに動いただけです。私、そんなに深く考えられないですから…。
だって、まさか地獄追い出されたらどうしよう、なんて、一切考えてもませんでした」
「ほう、では感情のままに大外さんを助けたと?鬼も哀れむほどの無慈悲が売りだった昔の貴方からすると驚きです。
貴方にとって彼って、そんなに特別だったんですねえ」
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作者名:更紗 | 作成日時:2021年1月22日 15時