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「ここは…?」
僕が彼女にそう問うと、彼女は首を横に振った。
「ここがどんな場所なのかなんて、今貴方が気にする必要なんてないわ。じきにわかることだから。
さて、問題は貴方がここにいること。
今から私が言うことに間違いがないか、座って聞いてなさい」
彼女はソファー的な物を示して僕に座るよう促し、自身も腰かけて話し始めた。
僕が幼い頃から数えきれないほどの殺しをしてきたこと、美しい女を好んで暴行していたということ。彼女が5人いたということ。
一度死にかけて、生死の狭間世界に迷い混んでしまったこと。
そして、地獄の門の鍵を持つ者によって地獄へ落とされたということ。
彼女は僕の過去を事細かに言い当てた。
「なるほど。…貴方もなかなかえげつないことをやってきたわね」
僕が彼女の言葉を肯定すると、彼女はそう言って苦笑した。
「それでも、原因は1つなんでしょ」
「………」
ふっと笑みを消してそう言った彼女は、恐ろしく美しかった。
「……それも、わかっているんだろう」
「親に認められなかった。愛されなかった。それだけのことでしょう」
無表情で目線を僕から外しながら、そう冷たく言い捨てた。
「っ…!それだけって……!!!」
いや、そうだ。彼女の言ったことは正しい。僕の行為の全ては、両親へのコンプレックスだったから。それでも、いとも軽いものとして言われてしまい僕の心境は穏やかではいられなかった。
「そう、それだけよ。難しい話じゃないでしょう」
悔しさが溢れた。涙すら込み上げる。まともに彼女の顔を見ることが出来ず顔を背けた。
「…だからこそ、どうしてもほしかったのよね」
「…え……」
顔を上げると、今度は天使のように優しく微笑む彼女がいた。
「子供にとって、親の愛情ほど必要なものはないと聞くわ。それが満たされなかった貴方は、親に愛されたくて空回りした…たったそれだけの、可哀想な人なのね」
そして、彼女は一筋の涙を流した。同情の涙だろうか。
可哀想。そう言われるのは惨めで嫌いだ。しかし有無を言わさぬ彼女の態度に、僕は黙っていた。
「貴方の罪は許されるものではないし、地獄に来て当然だとも思うけれど…それは今じゃない。現世でやること、まだあるでしょう。
だから貴方に、チャンスをあげる」
「…チャンスだって?」
耳を疑った。しかし、不思議と胸が高まる。
彼女こそがもしかして、僕を救ってくれる存在なのだろうか。
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作者名:更紗 | 作成日時:2021年1月22日 15時