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「……A、おーいAー」
体を軽く揺すられる感覚。
こじ開けた視界に入る、朝シャンしたての濡れた髪で申し訳なさそうにもじもじしてる翔太。
ドラマだったら昨日飲みすぎて記憶無くして目が覚めたらここはどこ…隣には裸の男がいてもしかしてやらかした！？的な展開になるんだろうけど最初から寝落ちる最後まで全部覚えてんな、普通に。
やたらとしつこく泊まってけと玄関口で騒ぐから近隣住民の迷惑になるし、寝かせて帰ればいいかって結局折れて。
だけどまあそっからの翔太は更に面倒くさくて。
家で飲むならいいんだろ？って二次会はじめるし、絶対興味ないのにこの映画一緒に観たいと思ってたんだよねって流しはじめたくせにトイレから戻ってきたらソファーで珍しくいびきかいて寝てるし。
いびきっていっても小さくて可愛いレベルだったからウケてしまった。次あったら録音してやる。
そこからはこっちも好き勝手にシャワーもスキンケアも使って寝巻きも前に置いていったのがあったからそれを着て。
ベッドに寝るのはさすがに気が引けたから引っ叩いて起こしてソファーからベッドへ移動してもらったんだ。
マジで全部覚えてました。
私に見下ろされる形で床に正座待機している翔太に問いかける。
「おはようございます」
「おはよう。謝罪、いただけますか？」
「誠に申し訳ありませんでした！」
「酒弱くなってるし重かったしダル絡みうざかったし先に寝るし！許されませんよ」
「Aだからと完全に甘えきってしまいました。なんなら普通に意識あった上で甘えました、記憶も途中まであります」
「…どういうつもりで？」
うーんって唸って黙り込む。
いや黙るな気まずいこれで理由なかったら重罪だぞ。
数秒後、さっきまでとは打って変わって瞳を輝かせバチっと視線がぶつかる。
そして、
「……やっぱり好きだなぁって」
「は？」
「Aが好きだから全部委ねて甘えたくなった」
？？
えっタイミングどうなってんの？この男すごすぎる…
こういうときは一切恥ずかしげなく堂々としてるのが不思議で仕方がない。
「…返事ってなんだっけとか言ってたくせに」
「大事なことだから飲んでるときに聞きたくなかった」
「酔ってたのもフリだったの？」
「ジョッキ2杯じゃつぶれない」
「…サイテー」
「でもそんな最低な俺も嫌いじゃないでしょ」
ああ、やられた。
私の気持ちを知っててわざと聞いてるんだ。
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作者名：無色透明 | 作成日時：2023年11月23日 22時
