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店内に入る直前手櫛でささっと前髪を整えいざ出陣。
指定された焼き鳥屋にある奥の個室まで進んで行くとうーす。と隙間から顔だけ出して出迎えてくれた。
あれからまあまあ忙しくて2週間振りくらいに会うけどいつみても新鮮に顔が良くてすごい。顔をつまみにして酒飲める。
「おつおつ」
「翔太もおつー。今日早く終わったんだ」
「そう、外回りで直行直帰パターンにしてた。1発目どれいっちゃう？」
「…自分ビールいいすか？」
「おっけ。では自分もビールいかせていただきます(笑)」
目が合ってお互い、にやっと口角が上がる。
この流れるように行われる自然なやり取りがたまらなく好きだ。
あとテキトーに色々頼むわって翔太がタッチパネルを操作して視線を下に落としている隙に、平日仕事終わりにしか遭遇できないスーツ姿を拝ませてもらう。
今日は外回りだったから前髪も分けてきっちりスタイルにしたんだなとか、仕事終わったからってシャツのボタン開けてネクタイ緩ませちゃってんの反則だよーとか。
何が言いたいかっていうと華金最高ってこと。
「食べたいのある？一通りアレしたけど」
「見せてー。砂肝頼んだ？」
「真っ先に頼んだ。Aが好きなのって覚えてた」
やばい、口縫わないといちいち悲鳴あげちゃうけど？
本当に…こういうことをさらっとやって他意なく言えちゃうところ…もう抱きついてもいいか？
8年の時を経た今、封印が解かれたことによって世界(翔太)のなにもかもが煌めいてみえるモードに入っちゃってるから、いちいちアンタが優勝！アンタしかおらん！になってしまう。
先にきた枝豆を口いっぱいに詰め込んでもぐもぐしてる翔太、ハムちゃんすぎるな。
「翔太って意外とそういうの覚えててくれるよね」
「ん？そう？」
「そうだよ。この美容液気になってるってちょこっと話しただけなのにプレゼントしてくれたし、あのアイス食べたいって言ったのも覚えてて家来たとき買ってきてくれたりするし」
「あー言われればそうなのか？特に意識してないけど。
まっ、Aの喜ぶ顔が見たいからとでも言っておこうかな」
ハハァ！って照れ隠しでボケたつもりなのか自分で大ウケしてるけどこちらは真面目に受け取らせていただきます。翔太は私の喜ぶ顔が見たいから覚えてくれてるらしいです。
食べ終わった枝豆の外側部分でHELPって文字を作って店員さんに助け求めようかな。
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作者名：無色透明 | 作成日時：2023年11月23日 22時
