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おふざけでも夢でもない。
夢オチにしては序盤すぎるし。
背中から伝わる床の冷たさと触れられている肩から伝わってくる翔太の体の熱さでバランスが取れなくなりそうになる。
「ごめん弱ってるところに漬け込むような感じになってるよな。
でも、ずっとAだけをみてた事は知って欲しくて」
「…何人も彼女いたじゃん」
「…この子と付き合えば一瞬でも忘れられるかなと思ったけど無理だった」
だからか。いつも付き合っては短期間ですぐ別れていたのは。
肩を押さえている翔太の指にグッと力が入った気がした。
そこからはもう黙っているしかなかった。
「なんで俺じゃダメなのかなって、…俺に靡けよって」
翔太が近付いてくることによってそれまで僅かに開いていた数センチの距離がまた徐々に無くなっていく。
キスされるんだ…覚悟を決めて口を固く結び目を瞑っていると聞こえてきたのはいつものデカすぎる笑い声。
「これで襲うなんてことしたら人として終わってんだろ」
「終わってんだと諦めて、覚悟したよ」
「それはショックだわ。俺の倫理観をナメんな」
力が抜けたみたいでやっと組み敷かれている状態から解放されて上体を起こすことができた。
冷静に考えるとこの短時間で色々なことが起こり過ぎてるだろ、勘弁してくれ。
「いますぐ答えつうかそういうの？は、いらないから」
「了解。それで今日は泊まってくの？」
「お前すごいじゃんこんな状況なのに」
「帰るの？」
「帰るだろ。あと話ちゃんと聞いてやれなくて申し訳ない。また連絡する」
そうだよ失恋して泣いてたのなんてどっかいっちゃったじゃん、まったく何してくれてるんだ。
そんなことはお構いなしに持っていたヘアバンドを無理矢理私の頭に嵌めてじゃあなーって風のように去って行った。
ガチャンと虚しく玄関の扉が閉まる音
その音と同時にずっと内に秘めていた感情が大爆発した。
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作者名：無色透明 | 作成日時：2023年11月23日 22時
