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阿部くんと別れたその足で、とあるマンションの暗証番号を慣れた手つきで打ち込みエントランスへと入る。
これこそ不法侵入で捕まっても文句は言えないけど今日だけはすまん、許してくれ。
エレベーターの中でやっぱいまから行くとか連絡いれた方がよかったかなとか今更じわじわと不安になってきたけどもう遅い。
今夜が勝負なんだから。
何度かインターホンを押したけど出ない。
0時すぎてるし寝てるか…帰ろうかな。
諦めて来た道を戻ろうとすると
開かれたドアから出てきたのは浮腫んだ顔にハネた前髪。
完全に寝てたスタイルでお出迎えありがとう。
「よっ」
「モニターでお前確認するまでマジでこわかったんだけど」
「連絡せずに来て申し訳ない」
「別にいいけど珍しいじゃん」
「いや、阿部くんと会ってたんだけどさ」
「…聞こえなかった」
「だから！阿部くんと！会ってた！」
「うるせー大きい声出すなってとりあえず中入れ」
腕を引いてズンズン歩く翔太に身を任せる。
あからさまに不機嫌になる翔太をみて可愛い〜嫉妬してるのかな〜って嬉しくなるなんて私も相当頭がおかしい。
「阿部とかいう奴とより戻すワケ？」
「戻さないっていう話をする為に会ったの。そもそもそんな気持ちも無いから」
「ふーん。それをわざわざ俺に言いに来たのはなんで」
不機嫌から一転、照れ隠しなのか口をわざと尖らせてみたり落ち着きなく部屋中を歩き回ったり。
前髪ぴょんぴょん跳ねさせて子供か。
「笑ってんじゃねーこっちは真剣なんだよ」
「翔太は私のことどう思ってるんだっけ？」
「あ？好きだわ何回も言わせんな」
「何回だって聞きたいもん。
私も翔太のことが好きだから」
やべ、もっと然るべきタイミングでとか考えてたのについ口が滑ってしまった。
翔太にバレないようにこっそり盗み見すると
大口開けたままかたまっちゃってるし。
立派な石像にでもなりましたか？
数秒して「はぇ？」なんてすっとぼけた声を出す翔太も、涙が出るくらい笑っちゃって喋れない私にムードもクソもあったもんじゃない。
「Aって俺のこと好きなの」
「うん好きだよ」
「ガチ？ガチの好きなやつ？」
「ガチの好きなやつってなに当たり前にガチだよ」
「…もういっかい言ってくれない？」
「しつこいなぁ翔太のこと大好きだよ」
大好きって言い終わる前にはもう翔太の腕の中で抱きしめられていた。
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作者名：無色透明 | 作成日時：2023年11月23日 22時
