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途中まで一緒の路線ということが判明して、
電車に乗ってからは噂で聞いたバイト先の店長の現在の話とか昔の思い出話をして場を繋ぐので精一杯だった。
さっきのことがあってからなんとなくどちらも取り留めのない話しか出来なくなったような気がする。
「この次で乗り換えなんだ」
「そうなんだね、じゃあ気をつけて」
「Aちゃんこそ。駅ついたらダッシュで帰るんだよ、知らない人にはついて行かないでね」
「子供じゃないんですけど(笑)わかりました」
扉が開いてホームに降りる阿部くんを見送る為に席を立った。
ブラックスーツの上にロング丈でグレーのダッフルコート。シンプルだからこそ、細身のスタイルの良さが活かされていてかっこいいなと純粋にそう思った。
くるっと振り向いた阿部くんは寒さで鼻のてっぺんが少し赤くなっていた。
「また連絡してもいい？」
「…阿部くんはそれでいいの？自惚れてると思ってもらって構わないけど私はこの先も変わらないと思うから。苦しくさせるだけだよ」
「それでもAちゃんを支えられるならいいんだ。…勿論友達としてね。」
扉が閉まりゆっくりと動き出す風景と共に口パクで伝えられた( またね )。
すぐにスマホが震えて手に取ると「Aちゃんを苦しませるようなことがあったら今度は引かないから」というメッセージが目に入ってきて力が抜けてしまい、酔ってもないのにふらつく足取りでまた席へと戻った。
もう既に苦しい場合、いまから入れる保険ってあります？
ちょっと〜神様聞いてますか？いや世間一般的にはこれをモテ期とか言うんでしょうけどあまりにも辛くないですか？私の人生こんなはずではなかったんですけど…。
とりあえず酒だ。帰り道ありったけの酒を買って今日を終わらせよう…今日だけでなく物心ついた頃からの記憶をなくして人生なかったことにしよう…
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作者名：無色透明 | 作成日時：2023年11月23日 22時
