言えない私と待てない彼 (ページ28)

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「手袋、マフラー、ダウンジャケット、ヨシ！」
『ヨシ！』

完全防備で冬の海辺を歩いてみる。
ここら辺で叫んでみたら不審者扱いされたなーとか出会ったときからの記憶が蘇ってくる。

『手、繋ぎましょう。あったかくなるかも』
「やってみよっか。」

差し出した手に重なる彼の大きな手

気のせいかもしれないけどさっきよりもあたたかいかも。

『ここで出会えて良かったです。』
「うん。私も。」
『Aさん、キスしてもいいですか？』
「聞かれると照れるけど……はい。」

そのままじゃ届かないから背伸びした私とそれに合わせて屈んでくれる彼。

『小さくてかわいい。』
「大きくてくやしい。」

ふふっと額をつけて笑い合う。
そしてまたどちらからともなくキスをした。

いつもは嫌なことがあったらそれを流すためにひとりで来ていた場所。

でも今日は。今日からはもうひとりじゃない。

これからはふたりで思い出を塗り替えていこうね。

【fin.】