言えない私と待てない彼 (ページ2)

今日:44 hit、昨日:52 hit、合計:134,089 hit

_ ページ2

「……さっむー。」

ライトで辺りを照らしながらそのまま車を停めた。
夏の暑さの余韻がまだ残るものの、夜の海辺は風も強く涼しいよりも寒さすら感じて、
念の為と持ってきていたカーディガンが役に立った。

職場で嫌なことがあると会社から少し離れた海へと向かうことにしていた。
波の音を聞きながら目を閉じると自分の悩みがちっぽけに感じるような気がして。

現実逃避でしかないけど私にはこの時間が必要だった。

いつもはぼんやり眺めて気が済んだら帰るんだけど
それだけでは無理なくらいストレスが溜まっていた。
軽く人がいないかだけ確認して、自分のいま出せる最大の声量で叫んだ。

「どいつもこいつも全部こっちに押し付けてきやがってーー！！！なめんなバカヤローーー！！！」

どこかのクサい青春映画かってくらい叫んだ。
波の音にかき消されるから安心して大声を出せた。

それに誰もいないしどれだけ叫んでも問題ないだろう

『おねえさーん！すごい声量っすね！』

そう、誰もいなければの話。

.