第十九話 赤の正体 ページ8
彼女はまた、自分を守るよう
身体を丸めて眠っていた。
今日の景色のほとんどを彼女は夢の中で見ている。
だんだんと眠る頻度が高くなっているように思えた。
最近はより強い敵と戦い始めたせいかもしれない。
夢を、彼女の内側を決して誰にも見せぬまま、
身体を丸めるのは苦悩を
抱えているからかもしれない。
自分自身という重荷と一緒に、
膝を抱えているのかもしれない。
3人の鬼と、無数の鎖を背負うリーグは
そんな少女を見下ろす。
リーグ「来るね、呼吸が変わった」
長い睫毛が持ち上がり、
白銀の隙間から赤が漏れ出す。
その目は、
リーグ「あーあ」
リーグが一気に鎖を突き刺す。
少女がいたコンクリートがぽっかり口を開けている。
『手荒な目覚まし時計だ』
一切の感情が霧散した目だった。
悩んで、絡んで、
故に読めなかったAの甘さはなく、
いっそ何も考えていないのではと思うほどの
凪いだ血の水面。
リーグ「彼女でもあなたは抑えられないのか」
『ふふふ』
絶え間なく降り注ぐ鎖、
揶揄うようくるくると回って、
しかしそれで全て避けきってみせる。
掠める気配すら感じない。
『世界が終わる、君のせいだ』
無差別な攻撃に後退していたグレンの背で少女は言った。
思考が過去の景色に塗り挙げられたのを、
グレンは平静を装って隠す。
グレン「何を……」
言いかけても、少女は既にそこに居ない。
過去を振り返っている暇は無いというのに、
どうしてもあの日が脳裏に張り付いていく。
仲間を蘇生させた日。
全ての人間を犠牲にして、世界を滅亡させた日。
何故知っている。
いや、Aは確かあの場にいた。
ならAの記憶だろうか。
しかし真祖のことだ、知っていても不思議ではない。
『君が合図を出すからだ』
今度は真上から声がする。
今度こそグレンは身体を硬直させてしまう。
その意味を、理解したからだ。
リーグ「何を吹き込んでいるので？」
『君は信用ならないって』
リーグ「また余計なことを〜」
リーグと少女は一旦距離をとる。
両者笑みを絶やさない。
リーグ「ところで鎌を出しませんね」
『ん〜、疑ってるね？』
じゃあいいだろう、出してあげよう
唄いながら、少女は手に、
確かに真祖の鎌を顕現させた。
リーグの笑みが苦くなる。
リーグ「くそ、A、しっかりしてくれ」
『あははは』
鎌が命を刈り取る動きをした。
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作者名：アルカーヌ | 作成日時：2021年9月24日 21時
