第二十話 ページ24
その1本を皮切りに、視認していた鎖の全てがフェリドへ飛来した。
ビルを割り、罪鍵を持つフェリドの腕を拘束する。
フェリド「つまらない……無駄なあがきだ。もう終われ、父さん」
フェリドの顔は笑っていた。
父さんと呼んだ身体に何度も剣を突き刺しながら、彼は落胆した笑みを絶やさない。
リーグ「おまえを吸血鬼にしたのは失敗だったよ、フェリド・バートリー」
リーグも表情を変えなかった。
興味のない、疲れ果てた顔だ。
警戒も何もそこには無かった。
フェリドは定期的に無駄話を挟みながら、それでも剣を突き刺し続ける。
いつまでもそれに無反応だったリーグの目が徐々に虚ろになる。集中しているのだ。
回復に意識の全てを集中させている。
無い彼の足がばたばたと忙しなく立ち上がろうと、立ち去ろうとしている幻覚を見た。
フェリド「終わりですか?人生は結局こんなもんなのかなぁ。千年のおいかけっこがこんな簡単に終わる」
先に立ち上がったのはAだった。
フェリドを掠めた鎖も、彼が弾いた物も、故意か偶然なのか彼女に傷をつけることは無かったことを、彼女がどう思っているかは分からない。
控えめに開いた双眸は瞼の影に隠れ、
拍動しない深紅が沈んでいるだけであった。
“ 言ったでしょ”
彼女の唇の動きを見たのは、彼女の正面にいたリーグだけだった。
A『終わんないよ』
その囁き声が吸血鬼たちの鼓膜を震わせた時だった。
「助けてほしいか?兄弟」
次の瞬間には、フェリドの腕が落ちていた。
「無様だぞリーグ。だからそいつを吸血鬼にするのはやめろと言ったんだ」
リーグ「いまさら。ならもっとちゃんとあのとき止めてよ、ウルド」
ウルド「助けてほしいか?リーグ」
現れたのはウルドだけではなかった。
その後ろにはレスト・カー、キ・ルクも控えていた。
リーグは考えた。
自分の計画を優先するか。
自分のことは自分でやるか。
こんな世界手放してしまうか。
まだ必死にしがみつくか。
リーグ「ああ、助けてくれ」
フェリドとクローリーは敵わない。
ウルドはあっという間に二人を制圧してしまう。
もしこの状況でウルドを退けられる人物は一人だけだ。
だからこそ、ウルドはその人物へ目線を送った。
Aは重たげに目を持ち上げる。
それだけだった。
ウルド「剣を捨てろ、拘束する。風紀を乱した罰は始祖会の協議によって決める」
当然、フェリドは応じなかった。
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作者名:アルカーヌ | 作成日時:2021年9月24日 21時