第二十話 ページ23
もし素敵な心意気で世界が崩壊したのなら、
それは幾分かマシな世界だ。
リーグ「君は世界の崩壊に無頓着だな」
A『あなたもそうでしょ』
リーグ「まさか」
A『崩壊したら、世界は崩壊したものとして扱うだけのことじゃない』
リーグ「ふむ、一理あるかもなぁ」
世界とはそういうものだ。
この世界に生きる者たちはそういうものだ。
勝手に世界が崩壊する。
適応できなければ生き残れない。
さて、リーグはこの局面で生き残る選択肢を掴めるだろうか。
通路の奥から、ラブコールが聞こえてきた。
リーグ「きたか、フェリド」
現れたのは、最早面のように美しい笑みを浮かべるフェリドと、ほとんど無関心のような表情で足跡を追うクローリーだった。
クローリー「あ、A様だ」
フェリド「え、パパとAちゃんが密会してるよクローリーくん。僕聞いてない」
彼女は無反応だった。
フェリド「やだなあ。父親と恋人が浮気してる現場みたいだ」
狭い路地で、彼らはリーグとAの間に割って入るように足を進める。
鎖が飛び出た上半身だけの姿のスーツの男と、
赤い上質な衣服を纏った美しい少女。
どちらも地面に脱力している様子は、道端に捨てられた人形を見ているようだった。
クローリー「まるで熱に浮かされてるみたいだ」
クローリーがAの呼吸を指摘する。
熱とは言い得て妙である。
最後に熱を出したのはいつだろう。
懐かしさと既視感がAの目を少しだけ動かした。
フェリド「またウインクの練習ですか？」
A『彼がそうしてほしいって』
2人がリーグを見下ろした。
リーグ「で」
そうしている間にも彼の回復は進んでいた。
目には見えないが、可動体制を取れるであろう鎖の数が増えているのをAは見ていた。
リーグ「どういう計画だい？」
フェリド「計画？」
リーグ「いったい私を殺してなんの意味がある？」
フェリド「意味？」
長い間組織を運営してきた身として、
真祖を視野に入れてきた彼にとって、
やる事なす事には意味があり、目的があり、綿密で膨大で、眠くなるほどの計画が常にあったのだろう。
フェリドはリーグの様子を窺いながらクローリーに対して生きる意味について説いている。
曰くその意味は無いと。
そんなくだらない話をリーグは全く聞いていなかった。
フェリドが罪鍵を掲げたその行動を認めて、
今漸く鎖がその身を翻した。
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作者名：アルカーヌ | 作成日時：2021年9月24日 21時
