第十二話 ページ45
クローリーが再び、愉しそうにグラスを傾け始めた。
私は感情の渇ききった目で笑ってみせる。
A『人間は、上位種族の吸血鬼に勝つために、強くなりました』
無い感情で、物語の語り手のように。
役者からは一歩引いた、客観的な視点で。傍観者の立場で。
A『でも勝てませんでした』
端的に。残酷で、当然で、事実だ。
A『どうしても、勝てませんでした』
責めるように。弱い人間を、憐れむかのように。
A『ならどうする？』
一歩歩くその動作で、机の上、ミカエラの前に移動する。
目を見開いたミカエラを見下ろして、汚れない真っ赤な瞳を覗き込んで。
A『吸血鬼より上の奴を、連れて来ればいーでしょ？』
ひどく偽物めいた笑顔を零した。
ミカエラは、何かいいたげに口を動かすが、それは言葉とならない。声にすらならない。
だってこれは、人間が考えていることだから。そこに偽りはないから。
どうしても、どうしてもどうしてもどうしても。
勝てないんだ。次元が違うんだ。殺されるんだ。滅ぼされるのなら。
そして人間は連れてきた。
天使を。終わりのセラフを。
A『人間を、否定するその考えを、変えてみたら？』
そう言った私はもう、笑っていなかった。
こんなに人間を否定しない吸血鬼は珍しいだろう。
ああ。もう、吸血鬼ではないけど。
色々見ちゃって。持て余されている時間で少し知りすぎてしまって。
こちらにそれぞれの視線を刺す二人から離れる。
扉の向こうへ。この空間の外へ。
今日はもうたくさん話した。
疲れてしまった。
でもまだ今日は、話さなきゃいけないから。これからまた人間が来るはずだから。
家族の死体を、分からない物を見る人間たちの反応を見なきゃならないから。
フェリドはこの地下にそれらを隠すように置いている。
私はそれを知っていた。
その分からない物を理解するために、新たに人間を呼んでいることだろう。
滅亡のきっかけ。家族を殺した人。
今日は長い気がする。今日はいつ終わるっけ。とっくに明日だっけ。
とりあえず、一度人から離れたかった。
一人になりたい。
いや、できることなら、誰もいなくなりたい。私もいなくていい。
少しの間だけ、死んでいたい。
あとでちゃんと起きるから。今を見るから。生きているから。
どこへ行くのかも、何をするのかもわからない中、
置いて行かれないように歩き続ける。
賑やかな館の中、そこを歩く私の音は掻き消される。
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アルカーヌ - はい！遅くなってしまってすみません、まだ見ていただけているならよろしくお願いします！ (2021年10月3日 10時) (
レス) id: ca02d30a4e (このIDを非表示/違反報告)
マナ - アルカーヌさん» 質問してもいいですか？ (2021年5月17日 14時) (レス) id: 6d5c9496f0 (このIDを非表示/違反報告)
アルカーヌ - 湖@清光可愛い！！！さん» リクありがとうございます！テスト期間なので更新が難しいので、気長に待っていただけると嬉しいです(T-T) (2017年11月16日 17時) (レス) id: 7e3fd42d16 (このIDを非表示/違反報告)
湖@清光可愛い！！！ - 凄く面白いです！あのリク良いですか？あの、夢主ちゃんとアシュラ(阿修羅丸)とクルルでお話をして欲しいです！後、アシュラとクルルだけでわいわいと夢主とか優ちゃん、ミカちゃんのお話をして欲しいです！無理でしたら良いです。更新頑張って下さい！応援してます！ (2017年11月8日 15時) (レス) id: 073b3b6cdc (このIDを非表示/違反報告)
ゆきりん(プロフ) - アルカーヌさん» 超絶面白いでス！クルル様とレスト様どこに行ったのかめっちゃ気になりまス！更新まってまス！ (2017年9月25日 21時) (レス) id: 3ffd7defde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アルカーヌ | 作成日時：2017年2月24日 23時
