終わりの熾天使〜真っ赤な崩壊、瞳を濡らす天使は高みの見物〜

鬼(2) ページ34

鬼〈まぁ、簡単に言うとね？

　 君は、そいつは鬼より浸蝕力が強いと見て、僕をAの心に入れた。

　 それで僕はそいつを追い出して、Aは僕を追い出す。

　 そういう計画で、君は鬼を入れた。〉

呑気に飴をかじりながら、鬼は言う。

鬼〈Aって一回貴重な実験体として色々されてただろ？

　 そのときに鬼も一回入れたけど、力を全く使わずに追い出したのを

　 君は知っていたから。〉

クルルは顔を歪める。

思い出せない。忘れてしまった記憶だ。

鬼〈でもね、その計画は上手くいかなくて。

　 実はA、その存在と混ざりかけてて、そいつ追い出せなかったんだよね。

　 Aは何を考えてたかは分からないけれど、そいつを食べて、

　 容量オーバー。

　 それで何故か、僕を追い出さない。

　 しかもそいつは、力を失った状態で、Aとはまた違う存在としてまだいるわけ。

　 鬼の君ならわかる？Aがすごいもの抱えてるの〉

阿修羅丸は目を丸くして、そのあと笑った。

ひどく困った顔をして、苦しそうに笑った。

阿修羅丸「そうだね、僕には無理だ」

クルルは一人で悩む。

きっと、長い間思うことがあって、重要なこともあったはずなのに、

こんな簡単にも忘れてしまっている。

鬼〈ちなみに、Aが人間の真似をし始めたのも、制御を失ったのも、

　 実験のせい。〉

だから、クルルの記憶を壊してしまったのは、Aの意思じゃないよと、

鬼はAを庇うような発言をする。

クルル「Aに、お前を入れたのは…間違いだったか？」

鬼〈どうだろうねぇ。でも皮肉なことに、僕が乗っとろうとすればするほど、

　 強さ取り戻していっちゃってさ。

　 世界のためを思えば正解だね〉

阿修羅丸「どういうこと、それは」

鬼〈僕が入らなければ、Aは多分世界の崩壊を、もっと早く招く。

　 楽しいと錯覚させているだけで、実は全然楽しくないんだ。

　 楽しいと思うのは、疲れるんだ。

　 脆くなったAは、回さない頭で全ての崩壊を始めるだろうね。〉

弱さは罪だと鬼は笑う。

赤いりんごあめをかじった。

鬼〈んー、りんごあめ美味しいけどさ、林檎がいかにも安物だよね。

　 売れ残りの林檎みたい〉

阿修羅丸「鬼はまずりんごあめ食べないはずだけど」

鬼〈へぇ〉

目をすがめながら、再びりんごあめをかじった。

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