終わりの熾天使〜真っ赤な崩壊、瞳を濡らす天使は高みの見物〜

吸血鬼達の休憩(3) ページ20

シノア「…なんていうか、あれですね」

だだっ広い館の、大きな浴槽内で、シノアが口を開く。

その隣を歩いていた三葉はその意味が分からず、不思議そうな顔をする。

吸血鬼、男子達と分かれ、風呂場にきたところだ。

シノア「吸血鬼も案外、普通に人生送ってるんだなぁって」

三葉「ああ、それは思った。私たち吸血鬼の私生活なんて、何も知らなかったからな」

視界が霞むほど立ち込めた湯気、よく声が響く。

ばさっと服を脱いだ二人は、湯舟がたてる音の方へ歩く。


シノア「あ」

A『……？』

白い湯煙の中、甘く赤い双眸がゆらゆら揺れる。

てっきりもう上がっているものだと思っていた二人に、緊張が走った。

無意識に臨戦体勢をとる人間を見て、吸血鬼の瞳が少し歪む。


A『…ん。いいよ、上がるわ』

ぱしゃんっと小さく水が跳ねる。

小さな吸血鬼は立ち上がり、湯舟から足を抜く。

第四位始祖、A･ツェペシ。

しかし実力は二位だと、彼女は言った。

どちらにせよ、シノア達がどう暴走しても、勝てない相手であることは確かだった。

そんな脅威以上の存在を前に、シノアの目は彼女から離せなくなる。

立ち込めた湯気の中、ただ深い色を放つ彼女の瞳。

白い肌に、更に白い髪もあり、今にも湯煙に溶けてしまいそうに見える。

溶けてしまいそうな彼女の存在感は、

ないようで、それでいて息が止まりそうな程の存在感があるようで。

きっとここで彼女が動けば、何も出来ずに死ぬだろう。



シノア「…ま、…待ってください」

いつの間にかすぐ横を通りすぎていた小さな吸血鬼の背中に呼びかける。

くる、と小さく振り返ったのが分かった。

シノア「一緒に、入りませんか」

ああ、自分の口は何を言っているのだろうか。

気高い吸血鬼の、しかも貴族が人間とお風呂に入る？

ああ、ああ、何を口走っているのだ。

ほんの僅かな時間。強く早く脈打つ心臓感じながら、シノアは自分の失態に気づく。


A『…良いの？』


三葉「…も、もちろん！というか、そっちは良いのか…？」

意外過ぎる反応に、シノアは声が出なくなる。

A『…うん』

長い髪から覗いた瞳が、嬉しそうに細められた。

見た目相応というべきか、吸血鬼がこんな表情をするのかと驚く。

少なくともシノアは、吸血鬼のこんな笑い方を、見たことがなかった。



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やばい更新停止してたごめんなさいΣ(￣ロ￣lll)

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