* ページ10
-
「——……綺麗」
「そうでしょ!たまに来るんだ。いつか一緒に来たいなぁとは思ってたんだけどね」
いつか、一緒に。その言葉に誘われたように、横に立つ彼を見上げる。
「連れてきてくれるつもりだったんだ」
「当たり前でしょー!こんなに素敵な場所、教えなきゃもったいないじゃんか」
「ふふ、そっか。ありがとう」
遠く、街並みに消えていく夕日を見つめる。ふわりと吹いた風は心地良い。
美しい夕焼けを、とっておきの場所で、大好きな人——片想いだけど——と眺める。こんな贅沢があるなんて今まで知らなかった。改めて感謝を伝えようと隣を見ると、私に体を向けて微笑む彼の姿がそこにあった。
「あのさ、おいら、決めてたことがあったんだ」
反対側からやってくる藍が、名残惜しそうに光を残す橙と混ざり合って、ぱちぱちと彼の瞳を瞬かせる。
息が詰まりそうなのに不思議と苦しくない。私はただ、彼の言葉を静かに待った。
「ここには、特別な人しか連れてこないよ。……君が最初」
「……それって、」
「うん。……つまり、だから」
——好きだよ。
風に攫われてしまいそうな、掠れた声で告げる。なのにそれが聞き取れたのは、きっと耳元で囁かれたから。
ぎゅっと力いっぱい、だけど多少の力加減はしてくれていて、ほんとうにこれは夢じゃないと教えてくれているような抱擁だった。胸元から鼓動が伝わってくる。ああ、彼も……私と同じだった。
「わたしも、ずっと好きだよ。待ってた、こうやって言ってくれるの」
「……ほんと?」
「嘘言ってどうするの。もちろん、本当だよ」
「そっかぁ……そっか、そうだったんだ。じゃあ、お待たせって言う方が正しい?」
「それより先に、言うことはないの?」
と、ちょっと揶揄うように言ってみると、彼はそっと体を離した。
その距離はここに来たときよりは確実に近くなっている。それがくすぐったくて、だけど、それ以上に幸せだった。
「……おいらと、付き合ってくれる?」
「——うん。もちろん」
私の言葉に嬉しそうに笑みを浮かべて、心から幸せでたまらないという表情をする。きっと私も同じようなものだろう。
指先まで熱い手が頬に触れて、空よりも赤く揺れる瞳が私を捕らえる。
その、ほんの一瞬の感触はあまりにも優しかった。
「…………もう暗くなっちゃったね。送るよ」
そう差し出された手を取る理由が、今の私にはある。
心の底から湧き上がってくる幸福感が、どうかいつまでも続くようにと、そう思わずにはいられなかった。
8人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
箸レーゼ(プロフ) - はるまきさん» 解釈一致ですか〜!?とっても嬉しいです!こちらこそリクエスト ありがとうございました✨ おおお、受験生仲間でしたか!お互い頑張りましょうね〜💪💪 (2月19日 17時) (レス) id: 6c5dc33c86 (このIDを非表示/違反報告)
はるまき - ふへっ最高!!!!!私が思い描いていたこの4人のヤンデレが、解釈一致してたのが嬉しい!ありがとうございます!そういえば、箸レーゼ様は受験生なんですね!私もです!お互いに頑張りましょう! (2月19日 17時) (レス) id: 4feaaff581 (このIDを非表示/違反報告)
箸レーゼ(プロフ) - はるまきさん» わーーー!ありがとうございます!☺️リクエストまで頂いて…🙏✨もちろん大丈夫です!頑張って書きます〜!! (2月16日 15時) (レス) id: 6c5dc33c86 (このIDを非表示/違反報告)
はるまき - リクエスト、いいですか?「キャラがヤンデレになったら」をお願いします! (2月16日 7時) (レス) id: 4feaaff581 (このIDを非表示/違反報告)
はるまき - ふへへっヤンデレ最&高!!!(取り乱しました、すみません)皆の反応が可愛いです!(特に「こっち向いて」が好きです!)つい夢主そこ変われ、と思いました!← 全てにおいて好みです!!!更新頑張ってください! (2月16日 7時) (レス) id: 4feaaff581 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ