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「ついつい、あなたに頼っちゃうの。……安心するからかな」
「え?俺って安心する?」
「するよ、すごく。こう、なんか……受け止めてくれそう、っていうか」
また、ひっそりと言う。
伏せられた睫毛も、揺れる瞳も、うっすらと染まる頬も。今ここに自分がいるからなのだと思うと、言いようのない満足感が心の底から湧き上がってくる。
これ、いけるんじゃね?
そう思った時にはもうすでに、彼女の白い手を取っていた。
細くて脆い、ちいさな手だった。
「俺、……お前の、その、悩みとか、そういうのも全部受け止めてやるから…………えっとさ、だから、なんていうか、」
うまく言葉が出てこなくてしどろもどろになる俺を、彼女が不思議そうに見上げる。
違う、なんか、どこか違うんだ、俺が言いたいのはこういうことじゃなかったはずだ。もっと何か、別の言葉で、アプローチでじゃなきゃ伝わらない気がしてならない。
「…………俺は、」
好きだった、はじめに話をした時から。今も好きだけど、今はむしろ、好きというよりも。
「愛してるんだよ、お前のこと。どうしようもないくらいに、本当に、俺じゃどうしようもないくらいに」
目を見開いて頬を染める彼女をじっと見つめる。
「俺に良いところなんて無いってずっと思ってた、今もそう思うことばっかだけどさ。でも、お前は違ったんだわ。
俺も知らなかった俺の良いところ、いっぱい見つけてくれた。俺、もう、それがすっごく嬉しくてしょうがなかった。お前に会って話すたびに幸せだった、いつも見つけてくれるから。
……でもさ、それって俺だけじゃないんだよな」
彼女が優しいことくらい、馬鹿な俺でもよく分かっていた。馬鹿だったから、余計よく分かっていた。
優しさが向く方向はひとつじゃない。だからこそ彼女が優しいんだということも、本当は分かっているはずなのに。
「俺にだけそうしてればいいのにって、何度思ったか!もう、俺、なんか可笑しいんだわ、お前が誰かんとこ行っちゃうかと考えただけで頭が狂うくらい。だから、だから、頼むから、もうこれ以上俺を……俺を、苦しませないでほしいんだわ……」
痛い、と小さく声がして、はっとした。
無意識のうちに、手を強く握ってしまっていたらしい。ごめん、と口では言うのに、手は離さないまま力を緩めた。離したくなかった、自分のもとに置いておかなければならないと、本気で思った。
困ったように微笑みながら、彼女は繋いでいなかった方の手を重ねる。
「私もあなたのこと、好きだったよ」
悲劇の始まりだと思った。
それはまるで、喜劇のような。
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箸レーゼ(プロフ) - はるまきさん» 解釈一致ですか〜!?とっても嬉しいです!こちらこそリクエスト ありがとうございました✨ おおお、受験生仲間でしたか!お互い頑張りましょうね〜💪💪 (2月19日 17時) (レス) id: 6c5dc33c86 (このIDを非表示/違反報告)
はるまき - ふへっ最高!!!!!私が思い描いていたこの4人のヤンデレが、解釈一致してたのが嬉しい!ありがとうございます!そういえば、箸レーゼ様は受験生なんですね!私もです!お互いに頑張りましょう! (2月19日 17時) (レス) id: 4feaaff581 (このIDを非表示/違反報告)
箸レーゼ(プロフ) - はるまきさん» わーーー!ありがとうございます!☺️リクエストまで頂いて…🙏✨もちろん大丈夫です!頑張って書きます〜!! (2月16日 15時) (レス) id: 6c5dc33c86 (このIDを非表示/違反報告)
はるまき - リクエスト、いいですか?「キャラがヤンデレになったら」をお願いします! (2月16日 7時) (レス) id: 4feaaff581 (このIDを非表示/違反報告)
はるまき - ふへへっヤンデレ最&高!!!(取り乱しました、すみません)皆の反応が可愛いです!(特に「こっち向いて」が好きです!)つい夢主そこ変われ、と思いました!← 全てにおいて好みです!!!更新頑張ってください! (2月16日 7時) (レス) id: 4feaaff581 (このIDを非表示/違反報告)
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