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楽しげに笑いながら店の裏へと入って行く彼の姿を眺めつつ、俺はそっと喫茶コーナーのソファーに腰を下ろした。
美「智洋ちゃんはどこから来たん？東京か？」
興味津々という身を乗り出す美恵子さんに、小さく首を振った。
神「あ、いえ、埼玉の大宮です」
美「転勤で来たん？」
神「はい。一昨年祖父が亡くなりまして、祖母が一人になってしまったので、これを機に同居しようって話になりまして。ようやく父の転勤願いが通って、去年の夏にこっちへ」
美「もう慣れたかいな」
神「......ええ」
そっと頷いた時に、コーヒーの香りが鼻腔をかすめた。
顔を上げるとトレイを手にしているホームズさんの姿が目に入った。
流「どうぞ。うちはいつもこうして飲み物をサービスでお出ししているんです。僕の趣味でして」と陶器のカップを俺の前に置いてくれた。
美味しそうなカフェオレに目尻が下がる。
流「去年の夏に越して来たなら、暑かったでしょう。」
そう言って、ホームズさんは対面に腰を下ろした。
神「暑かったですけど、埼玉も変わらないです。ただ、冬の寒さには驚きました」
そっとカップを手に取って、ゆっくりと口に運ぶ。
三月とはいえ寒暖の差が激しい時期。
ホームズさんの淹れてくれたカフェオレは、少し冷えていた体に染み渡った。
美「そら、そうやろなぁ。冬の京都はあかんで。底冷えするから」
村「せやねん、大阪からこっち来たら、寒くてビックリするで」と、美恵子さんに続いて村上さん。
どうやら村上さんは、大阪の方のようだ。
流「下鴨さんは、北の方にありますから、またさらに寒いですからねぇ」
うんうん、と頷くホームズさん。
そういえばホームズさんは標準語。元々、どこの人なんだろう？
流「ああ、僕はずっと京都ですよ。敬語なので分かりにくいと思いますが」
心の声に答えるように返されて、ブッとカフェオレを吹きそうになった。
ど、どこまで、お見通しなんだ、この人は！
村「だから、ホームズ、それやめろて。智洋くん、ビックリするやろ、こいつ」
神「は、はい。いつもこうなんですか？」
流「いえ、いつもはもっと口にしないように気を付けています。今日はどうしてでしょうかね？」なんて小首を傾げる。
口にしないように気を付けてってことは、やはりいつもこうして敏感に分かる人なんだ。鑑定できる人って、こんなものなのかな？
流「......智洋さん、品物を拝見してもよろしいですか？」
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