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と、それはさておき、そんなわけで、この三条商店街に遊びに来ては「蔵」を横目で見つつ、素通りしてしまっていた。

いつまでもウロウロしているわけにはいかない。

手にしている紙袋の紐をギュッと握る。

(よし、入ろう!)

意を決した瞬間、背後からスッと、スーツを着た中年男性が自分を追い抜いてカランと扉を開けた。

?「おー、ホームズおるかー?」

(ホームズ?)

怪訝に思いながらも、その男性につられるように、自分も店内へと足を踏み入れた。

店へ入るなり目にしたのは、古き良き洋館の応接室を思わせるアンティークなソファー。

楽しげにコーヒーを口に運ぶ初老のご婦人。決して高くない天井には小ぶりのシャンデリア。壁には大きな柱時計。店の奥のたくさんの棚の上に並ぶ骨董品と雑貨。

入口から見たら小さな店だったけれど、随分と奥まっているようだ。

ソファーがある応接スペースの側にカウンターがあり、大学生にしか見えない若い男性が椅子に腰掛けていた。

流「いらっしゃいませ」

その学生にしか見えないカウンターの彼は、俺たちの方に目を向けてニコリと微笑んだ。

細身の身体、少し長めの前髪に白めの肌。そして鼻筋の通った、なかなかの......。

いや、かなりのイケメン。

......カッコイイかも。アルバイトの人なんだろうか?

?「ホームズ、これ、識てくれへん?」

スーツ姿の中年男性は椅子に腰を下ろして、風呂敷をカウンターの上に置いた。

流「村上さん、いいかげん、「ホームズ」って呼ぶの、やめてもらえませんかね」

村「ええやん」

悪びれもしない「村上さん」に「ホームズ」と呼ばれているイケメンは肩をすくめつつ、白い手袋をして、丁寧に風呂敷をほどいた。

開かれた風呂敷の中には、見るからに立派そうな長方形の桐箱。さらに箱を開けると、太く巻まかれた金の表装が見えた。

どうやら、掛け軸らしい。それは「高価なもの」という雰囲気を漂わせている。

流「金襴表装(きんらんひょうそう)ですか......」

ホームズさんは「へぇ…」と雫して、顔を上げた。

流「随分と着物がいいですねぇ」

村「やろ?俺もそう思ったんやけどな」

そんな会話を耳にしながら、小首を傾げた。

(着物がいい?)

すると、ソファーでコーヒーを飲んでいた初老のご婦人が立ち上がり、

「まあまあ、着物やて?」と言いながらズイッと身を乗り出した。

「なんや「着物がええ」って言うから、着物か思たら掛け軸やん。また、随分と立派やなぁ」

・→←序章 「ホームズと白隠禅師(はくいんぜんじ)」



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作者名:流智LOVE | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年1月2日 14時

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