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伊野尾side
「……人がいっぱいで覚えられなさそう」
「ははっ、そう言うと思った！ でも伊野ちゃん暗記とか得意でしょ？」
「何言ってんの、俺数学とかの方が好きだし。というか教えてるし」
一通り自己紹介が終わり、いつもより少し早い夜ご飯を食べた。
俺の隣で目を輝かせているそいつは好物のオムライスが出て嬉しかったよう。
「だいき……くん？」
「ん？ なぁに？」
「だいちゃってよんでいい？ ひかのこと、ひかってよんでいいから！」
「ふふ、いいよ！ ひか♡」
「だいちゃ♡」
目の前で繰り広げられる会話にみんなニコニコしている。ここの人はみんな子供が好きなんだな、俺と違って。
「そういえば、伊野尾ちゃんはどこの高校に勤めてるの？」
「えっと、ちょっと遠く行ったとこのです、」
「堅苦しいなぁ、敬語じゃなくていいよ！ 俺だって伊野尾ちゃんって呼んじゃってるし」
中島さんが言った。こうやってたった一日でタメで話させようとする中島さんはやっぱり距離の縮め方が上手い。ちょっと強引だけど。
「わかりま……わかった」
「伊野ちゃん昔やってたやつやったら！ 『いーの？ おっけい！』ってやつ！」
……黒歴史掘り起こすなよ。
「え！ 何それ！ 伊野尾ちゃん面白っ！」
中島さんが手を叩いて笑った。言い方がバカにしてるでしょ。
「たかぎ！ 掘り起こすな！ それはもう封印したんだから、」
「いーじゃん別に〜、子供ウケはいいかもよ？」
子供嫌いが子供のためにやるかよ。
するとあの女の子みたいな人……山田さんだ。山田さんが「ごちそうさま、」と食器を片付けた。
「ほんと、食べないよね〜」
「食べるときはリスみたいに食べるのに量自体は少ないよね〜」
「うっせぇ。とっとと風呂入って寝ろ」
おっと、言葉が悪いようで。
ここの人たちは家族みたいであったかい。何もしてなくても笑みがこぼれるし、きっと仲いいんだろうなぁ。いや、仲いいんだよ。
「ねぇねぇけい、」
「ん、」
「きょうね、ひかとねていい？」
「好きにすれば、」
「伊野尾ちゃん、その態度はないよぉ〜」
「いや俺、子供とかだめなんだよ」
「それでもさ？ 自分の子なんだから」
「そうだ！ けい！」
「お前は便乗してくるな！」
自分の子って……ほんとにそうかはわからないのに。
なんだかなぁ。
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作者名：ゼブラ x他1人 | 作成日時：2019年1月5日 13時
