60.小さな背中 ページ10
大貴.
薮「A!!」
『び……っくりした、!』
大「……え?」
コンサートのリハーサル中、フライング演出のある曲を通していたんだけど……
ガタンと大きな音がして、さっきまで隣で歌っていたはずのAが、ステージ付近まで落ちて行った。完全に落ちたわけじゃなくて、寸前で止まった感じ。それでも突然のことにスタッフさんは大慌てで、俺たちメンバーも急いで降ろされた。
光「A大丈夫?固定甘かったか?」
薮「怪我してない?」
『あ……うん、平気、』
伊「すっげえぽかーんって顔してんじゃん」
雄「ほんとに。無理しないで休みなよ」
こういうとき、年上のメンバーは凄い。普段は歳の差とかあんまり感じないけど……すかさずそばに寄って、優しく声をかけてくれる。Aが困らないように、明るく笑顔で。俺も頑張らなきゃな……「大丈夫?怪我ない?」とか、そんなことしか言えないけど。
そんなことを思いながらAに近寄ると、「ごめん!」と大きな声で両手を合わせられた。
大「え?」
『私は全然平気なんだけど、ちょっと酔っちゃって……お手洗い行ってきます!ごめんなさい!』
裕「あ、ちょ……大丈夫なの?!」
「大丈夫!」と大きな声で手を振ったAは、急ぎ足で舞台袖にはけていった。酔っちゃったって……あいつ、乗り物酔いとかするタイプじゃないし。何か変だな、
涼「Aちゃん……行っちゃった、」
薮「うーん……とりあえずはシステム確認するみたいだし、俺らも休憩だって」
光「落ち着いたら水でも持って様子見に行くか」
知「……うん、そうだね。心配だけど」
不安そうな顔をする山田たちをなだめる薮くんと光くん。それでも俺は……よく分からないけど、今のAを一人にしたらダメな気がした。直感的にだけど。
大「……俺!軽く様子見てくる!心配だし!」
皆はびっくりしたかのように目を丸くしたけど、何かを察してくれた伊野ちゃんは「大ちゃんに任せよっか」と皆の背中を押して、楽屋に戻って行った。
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