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99.ふらふらしないの ページ49

貴方.



『ゔっ……きもちわる、』




ぐらぐらと揺れる視界、常に目が回っているような感覚。バラエティ番組の罰ゲームなんかでぐるぐるバットをやらされたときとか、椅子に座ってふざけて回ったときみたいな……ああもう、本当に大変なときほど無駄に考えてしまう。

何の変哲もないリハーサル室の照明が、こんなにも眩しいなんて……ちょっと不快だ。チカチカする。




光「Aどした?フラフラする?」

伊「座ってなくて平気なの?」

『ん〜……大丈夫、もうちょっと振り入れとかないと、』




他の仕事もあるから、今日入れられるだけ入れとかないと……ダンス自体は苦じゃないし、楽しくできるはずなのにな、

流れている音源や振付師の先生の声も、いつもなら気にならない音量なのに、頭にガンガン響くようで。本格的にまずいのかもしれない……壁に寄りかかって耐えていると、ふっと力が抜ける。




『……あ、』




ぐるんと視界が回転した瞬間、私の体は硬い床に打ち付けられることはなく……代わりに伸びてきた誰かの腕が、しっかりと抱き止めてくれた。

そのままゆっくりと足が浮き、抱えられているのだと悟る。皆の声がぼんやりと響いて、言葉と認識する前に音のまま頭に届いた。絶え間なく短く聞こえるそれは、多分私の名前を呼んでいるのだろう。


じわりと色が滲み始めた視界に、侑李の顔が映った。




知「……ほんとに、あんまりふらふらしないの、」

『うん……?』

知「ちゃんと聞いてる?ていうか聞こえてる?僕の声」

『だから……そんなに呼ばなくても、ここにいるって……』

涼「Aちゃん、何も聞こえてないな……これ」

知「……こんなになるまで我慢して、」




「ばか」と口が動いたのだけは、やけにハッキリと見えた。

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作者名:流星 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年8月5日 1時

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