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貴方.
伊「……A、いい匂いすんね」
『そう？シャンプーかな、何だろ』
伊「女の子、って匂い」
『……？』
それを言うなら慧の方がよっぽどなんだけど……すん、と息を吸えば、花のような香りがした。香水かなあ……何使ってるんだろ。
伊「……あ〜、ほんと、お前よく手出されずに済んでるね。共演者とか」
『そこは皆大人だし？……ないでしょ』
伊「いや〜……今みたいなのとか、急にされたらびっくりする」
『……慧もした？』
今みたいなの……人の匂い嗅いだりってこと？誰彼構わずやるわけじゃないし、私だってそれなりに人を選んでる。メンバー相手ならやってしまうことの一つではあるね。
慧は私の首元に顔を埋めると、「キュンってした」と呟いた。
『……く、くすぐった、』
伊「ん〜？仕返し」
『何で怒ってんの……』
伊「Aが魔性の女すぎて心配なの、俺は」
『魔性……』
肩に感じる吐息が熱くて、何だか変な感じ。わざとやってるんだとしたら、私なんかよりも慧の方がタチ悪いと思うけど……
ゆらゆらと揺れる体は、徐々に不安定になっていく。バランスを保つのが精一杯かも。
『……慧、倒れちゃう』
伊「いーじゃん、ソファなんだし」
『皆帰ってきたら絵面やばいよ』
伊「……見せつけてやろ、」
『っわ！』
バランスを崩して倒れた私を、クッションの山が支えてくれる。背中に添えられた慧の手が、徐々に頭の近くにやってきた。冗談抜きで、今見られたら本当にやばい。慧もそれを分かってやってるわけだから……
万が一ってときには本当に蹴るからね。私、言ったからね。……そんな気持ちを込めて、丸い瞳を見つめた。
伊「……楽屋、は、やばいか」
『どこでもやばいよ』
伊「ん〜……惜しいなぁ」
くるくると私の髪を弄んだ慧。何だか寂しそうな表情に見えて、庇護欲をかき立てられてしまう。男性相手に感じるのか、こんなの……放っておけない、捨て猫みたいだ。
それでも時間は無慈悲に過ぎているようで、私が慧の頬に手を添えた瞬間、楽屋のドアが盛大に開かれる。
大「……はっ、」
涼「なに、だいちゃ……え」
伊「うわ〜、見られたくない奴ツートップ」
『だから言ったのに……』
それから暫くの間、私のそばに大貴と涼介がつくようになったのは、また別のお話。
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