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大貴.
大「……A?いる?」
薄暗い廊下の向こうにある、女子トイレ。とりあえずここに来るまでの廊下は確認したし……いると思うけど、一応声はかけておく。突然ノックしたりしたんじゃびっくりするだろうし。
結構大きな声で聞いたけど、返事はなくて。多少の罪悪感と恥ずかしさを感じながらも、「これは緊急事態だ」と自分に言い聞かせて、女子トイレのドアを押した。
大「ごめん、入るけど平気?……A?」
そこにいたのは、荒い呼吸を整えることもできずに、ただ洗面台に両手をついて俯くAだった。
苦しそうな呻き声をあげながら、ただひたすら息を吸い続ける。今のAの状況は良くないものだと、俺でも一目見ただけで分かった。そっと顔を上げたAは、目に涙をいっぱい溜めて俺を見やる。
『だい、き……?なんで、』
大「何でって、それはお前が心配で……」
『ごめ……っはぁ、……ひ、……くるし、』
大「どうした?苦しい?大丈夫?」
見たところ過呼吸を起こしているA。慌てて駆け寄って背中をさすると、いつも笑っているはずの顔は真っ青で、頬は涙でぐちゃぐちゃに濡れていた。
こういうときって、どうしたらいいんだっけ……精神的なものが原因だから、落ち着かせなきゃいけないんだよな。俺だってパニック状態なのに、こういうときほど冷静に動けるから驚いた。
大「……大丈夫だって、俺がいるじゃん。ゆっくり息吸って、吐いてみよう?」
『う、ん……っごほ、……ううっ、』
大「Aは何も悪くないんだからさ、な?泣かなくて良いんだよ」
『だいき……』
Aは、あまりにも酷く落ち込んでいると思った。俺の前ではいっつも元気で、明るく笑っているのに。それがこんなに苦しそうな顔をして、泣きながら俺の名前を呼ぶんだから。
やりきれなくなってそのまま抱き締めると、Aは俺の背中にしがみつくように腕を回した。
……あれ、こいつ、こんなにちっちゃかったっけ。
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