93. purple × rings ページ43
貴方.
雄「……うん、やっぱり短いのも似合うけど、俺は長いのも見たいな」
『あは、……雄也ってロングが好きだったっけ？』
雄「ん〜……俺が好きなのは、自分のやりたいようにやる、素直なAだけどね」
.
雄「これとかいいんじゃない？華奢なやつ、何個か付けるの」
『へ〜……勉強になるわ』
雄「いや、絶対Aのが詳しいからね？」
『そうでもないんだって、これが』
本当に勉強になるのに……なんて呟く私を見て、おかしそうに笑った雄也。彼が選んでくれるのは、私の指に似合いそうなリング。パーソナルカラーとかそういうのは気にしてないらしく、目に入ったものを着せ替え人形にするみたいに私にはめていく。
「どれも似合うからなあ」なんて、素で言ってるからずるいと思う。
雄「一個くらい大きめの飾りがついてても良いよなぁ……やべ、結構楽しいかも。これにしよ」
『……何かね、雄也が私のことで楽しそうにしてくれるの、ちょっと嬉しいよ』
雄「え、そう？珍しくなくない？Aのこと好き好き〜って毎日言ってんじゃん、俺」
『誤解を招く言い方はやめなさい』
シルバーリングをいくつか手に取った雄也は、「あとは付ける指だね〜」なんて腕を組んだ。どこに付けたって同じなんじゃ……と思う私よりおしゃれさんな雄也のことだから、素直に聞いておこう。メンバー随一のモテ男ですし。
随分と長くなった、今では金髪のロングヘア。デビューして数年の間は意図的にショートヘアにして、わざとかっこよく見えるようにスタイリングしてたんだよね。イケメンイケメンって言われることに安心感を覚えて、そうでなきゃ受け入れられてないような気がして。
そんな私を見透かしたように笑った雄也は、「Aがしたいようにするのが一番だから」と、短い毛先に指を通して笑った。……後にも先にも、あんなにドキッとしたことはない。
雄「……きれーな指、怪我とかしないでよ？これからも」
『もちろんですよ。雄也が褒めてくれたものは全部大事にする』
雄「はは、それなら良いよ。ずっと大事にしてね、自分のこと」
『……うっわぁ、それはずるい！』
黙ってたら誰よりも大人っぽいのに、いたずらっ子のように笑うその姿は可愛らしい。いつまで経ってもこの人には勝てっこないんだなあ、なんて……リングに施された、ほんのりと紫色の輝きを放つ石を見て、そう思った。
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