ずるいひと《 孤爪研磨 》

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貴方.



「あれ……花橋さんだ、」

『研磨くん、お疲れさま！』

「うん、ありがとう。花橋さんも」




「次の試合まで休んでなくていいの？」と、私の心配までしてくれる研磨くん。確かに皆を見守ってる分精神的には消耗するけど、体力面は全然平気なのだ。空調もしっかりしてるし……って、そうじゃなくて。

普段なら楽しく笑えるのに、今日はダメみたい……どうしよう、変な人って思われるかも。




『私は皆ほど疲れてないよ、ありがとう』

「そっか」

『……研磨くんたちは、たくさん休まないとだね』

「うん、ほんとに……楽しかったけど疲れた」

『ふふ、そっか』




すっかり汗の引いた額や顔に、もう見慣れた真っ赤なユニフォーム。その背中はやっぱり大きく見えて、勝手に弟のように思っていた研磨くんは、ちゃんと男の人なんだなあと納得する。




『……私ね、バレーやったことないし、今回のゴミ捨て場の決戦がどんなに凄いことか今でも分かってなくて』

「うん、おれも」

『でも、因縁の相手とか、そういうの全部抜きにして……研磨くんたちの音駒と戦えて良かったと思うんだ』

「……それも、同じ」




つんと鼻が痛くなる。こんなところで泣くのはお門違いだ。烏野は勝ったのだ。もう次の試合のことを考えて、進まなきゃいけない。立ち止まってはいけないし、勝敗は研磨くんにとって重要なことではないと思うけど……私は喜ばなきゃ。笑わなきゃ、




『……やっぱり寂しいね！もう私は烏野と音駒の試合を、コートのすぐそばで見ることができないんだって、そう思ったら、』




なんて素敵な試合を、とんでもなく貴重な特等席で見届けられたんだろう。今思い出しても震えてしまいそうな、脳裏に焼き付いて離れない試合だった。

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