愛されプリンセス《 HSJ 》

35.あめ ページ35

貴方.



『……くそ、振られた』

伊「女の子がそんな汚い言葉使うんじゃありません」

『だって〜……あ、おはよう』




「おはよう」とひらひら手を振る慧。その声に反応して皆も続々と声をかけてくれる。

近くのスタジオで撮影をしてから、皆との取材に合流。歩ける距離だから歩くよ、なんて己の健康のためにマネージャーさんと別れて歩いて来たんだけど……運が悪かったらしく、外に出てすぐ雨が降り出した。


びしょ濡れの私を見て、皆は「派手に振られたね」「風邪引くぞ」なんて心配してくれる。




『ん〜……着替えるわ。今日楽屋ここだけだよね？』

薮「おう、そうだな。俺ら外出てようか？」

『今更気遣わなくていいよ〜。今までだって何回も一緒に着替えてるじゃん』




ライブのときは忙しなくてもみくちゃだから、いちいち隠してられないし。大体インナー着てるからセーフだもん。今日だってかなり厚めのインナー着てるから問題なし！

水浸しになってしまったTシャツを脱ぐと、中に着ていたタンクトップは少し濡れていた程度で何とか着ていられそうだ。




『衣装来るまでこのままでいていい？』

雄「俺らはいいけど……風邪引くでしょ」

裕「じゃあこれ羽織ってなよ。俺のだけど」

『え、良いの？直に着ちゃって』

伊「……直にって、なんか」

涼「あーもーうるさい！伊野ちゃん！変なこと言うな！」

伊「まだ何も言ってないじゃん(笑)」




慧の口を塞ぐ涼介を横目に、ぶかぶかのパーカーを羽織る。あ、裕翔の匂いがする……袖の部分に顔を近付けると、もっと濃くなった気がした。いや〜、爽やかだね。

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